温故知新とSFの融合「スメラミシング」の凄み
「君のクイズ」「地図と拳」など、気になっている作品が多い作家さんのサイン本が丸善にそっと売っていて秒で購入しました。

サインはこんな感じでした。かわいらしい☺️
”すめらみこと”のスメラ+ing(進行形)で「スメラミング」というタイトルだと勝手にめっちゃ納得していたら、「スメラミシング」の勘違いでした😂
ほろ酔いの状態で読むとより一層面白く感じられておすすめです。
アルコールでバグった脳に、文章がとても上手な人が書いた狂った虚無の世界が沁みる沁みる。
表題作を含む六作収録の短編集。
SF的な色の強い作品が多いものの、(全編が「宗教」「信仰」あるいは「陰謀論」がテーマであるという共通点はあれど)作品のテイストというか方向性が結構バラバラで驚きました。
知らない領域の知識(七十人訳聖書…量子力学…)に触れつつ、上質なストーリーも楽しめるという贅沢さが楽しかった。古い古い昔のお話から、ずっとずっと先の未来のお話まで、器用に何でも書けて、そのほとんど全てが面白いってすごいな〜!と感心しきりでした。
こりゃ売れっ子作家さんですわ!と謎の納得感。
きっと他の作品も面白いんだろうなと思って、「嘘と正典」を買いました。※積読中
以下、各収録作品のネタバレ感想が続きます。未読の方はご注意ください〜!
各話のネタバレ感想
- 七十人訳聖書に隠された衝撃の秘密を明かす歴史空想小説(「七十人の翻訳者たち」)
- この話から走るのは、初読み作家さんだとちょっとハードル高いかも。(途中で諦めて数ヶ月積んで、重い腰を上げて改めて読み直したらめっちゃ面白くて驚いた)
- SFでありつつ、出てくる固有名詞は実在のものってところが興味をそそられるポイントだと思う。この話を読んだ後にキリスト正教会(※御茶ノ水のニコライ堂)に入る機会があって、正教会の特徴を読んだら70人訳聖書が出てきてニチャついた
- いままでわたしは知らなかったけど、数々の物語に登場してきたであろうアイコンたる70人訳聖書と、最新技術であるゲノム編集を物語の解析に駆使するという組合せが面白い。この…なんというか…ソリッドな感じ?これが著者の持ち味なのかな?
- 天皇の棺を運ぶ一族の末裔による労働バイオレンス小説(「密林の殯(もがり)」)
- これも八瀬童子という歴史的存在を持ち出しつつ、”3つの神を運ぶ”配達員の生き様をあぶり出していくさまにゾクゾクした。天皇の棺を運ぶ一族の末裔が、伝統を守ることに反発しながら配達の仕事を天職のように嬉々として取り組む姿が、京都弁を思わせる柔らかめの関西弁と相まって、愛おしさすらあった。アマゾンをさん付けで呼ぶ生真面目さな。
- 読み終えてから、タイトルの「密林」がアマゾンであることに気づいて、またゾクゾクする。この話で一気に著者のことが好きになった。
- 苦役列車みたいな、肉体労働者の苦しみや、やや破滅的な展開も読者の目を離せなくさせる秘訣なのでしょうな。
- 陰謀論者たちのオフ会を描くサイコサスペンス(「スメラミシング」)
- 表題作ですね。とある方の本作感想noteで、『「スメラミコト」の「コト」を現代語の「事」と掛け、さらに英訳して”thing”としたものが「スメラミシング」』と書かれていて、なるほど!?!?となった。
- ミスリードさせる系の作品ですなと思っていたけど、振り返ってみるときちんと、一人称が書き分けられていた。単にわたしの読みがウルトラ浅いだけだった。
- 最後の宗教〈ゼロ・インフィニティ〉をめぐる魔術的数学奇譚(「神についての方程式」)
- インドの新興宗教と、超ひも理論の研究を結びつけてごった煮にして……という意欲作。
- 神が禁忌とされた惑星の不都合な真実(「啓蒙の光が、すべての幻を祓う日まで」)
- 見慣れないカタカナが続いて少しとっつきにくかったけど、これも面白かった。言い方悪いかもしれないけど、設定が細かく練られた星新一の中編(※星新一比)って感じ。
- 文明崩壊後の少年少女に与えられた残酷な使命(「ちょっとした奇跡」)
- 静謐な映画を見ているような…2001年宇宙の旅?でクラシックが流れて世界に衝撃が走った時みたいな、どこか少し懐かしさを感じさせるタイプのSFだった。最初のがモダンで、この話がトラディショナル、的な。
- かなり絶望的な状況だけど、淡々と、かつ前向きに生きる人類の逞しさに、物語ながら敬服する。このたくましさはきっと、「いつか死ぬのになぜ頑張るの?」という根源的な問いに通じている。
宗教・偶像と人間の営みとのあわいが精緻な文体でかたどられ、軽妙洒脱な語りと重層的な構図の妙を存分に堪能できる一冊でした。