【ネタバレ注意】ここが変だよ「変な家」

これは、ある家の間取りである。
あなたは、この家の異常さが分かるだろうか。
おそらく、一見しただけでは、ごくありふれた民家に見えるだろう。しかし、注意深くすみずみまで見ると、家中そこかしこに、奇妙な違和感が存在することに気づく。その違和感が重なり、やがて一つの「事実」に結びつく。
それはあまりにも恐ろしく、決して信じたくない事実である。

P3〜5

キャッチーな表紙と、大きく描かれた不穏なタイトル。

表紙を開いてみると、真っ黒なページに浮かび上がるように描かれた一つの間取り、そしてこの好奇心を煽るまえがき…。

映画化も決定したという(おめでとうございます!)雨穴さんの「変な家」を読みました。

あやふやな記憶って怖いね

ネタバレ感想を書こうとしながら恐縮なのですが、わたしのモットーは「何事も予備知識が無い方が面白く本を読めるに決まってる」なので、もし「この本は読むことに決めている!」という方がいらっしゃったら、続きは読まずすぐさま本書をポチることをお勧めします。

進むのをお辞めになる場合は、ぜひ当ブログの一番人気記事をチェックして見てください〜
本と旅が好きすぎて、全国の行ってみたいライブラリー付のお宿をまとめました☺

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それじゃ、ここから先は「そうは言ってもどんな感じなのか知りたい」あるいは「内容がとにかく気になる!踏み込んで知りたい!」あるいは「もう読み終わったから他の人の感想が知りたい」という人しか居ないってことで良いですね??

……ええ、本作はわたしが思っていた感じとちょっと違いました。(おもむろに椅子に座り、手を組み、両肘をヒザの上に置く)

というのも、わたしが本作を読んだきっかけは、今は(一時的に)亡き三省堂神保町店で……行かれたことある方はイメージ湧くと思うのですが……そこではエスカレーターで上り下りする壁面が鏡になっていて、そこにパネルを沢山貼ることで、エスカレーターを使う人の目に自然と流れ込むように本の紹介をする展示をやって居たのですが、そこで見かけたからなのですよね。

確か間取りがパネルになっていっぱい貼ってあって、映画化も決定してて、いろんな訳あり物件が紹介されていたような……

後日、この超あやふやな記憶でネット検索をして出てきたのが本作だったのでした。

しかし、読んでみるとちょっと想像と違っていました🤔

本作は四章構成なのですが、二章の途中くらいで違和感に気づきました。

「あれ……?これってもしかしてフィクション?」

そして裏表紙の著者紹介を確認して気づきました。

ホラー作家さんじゃん!道理で!!!

読み終わってからググって見たのですが、かの有名なWEBメディア「オモコロ」さんにも本作の一部(一章丸ごと)が掲載されているのですね。

(オモコロ自体はすっごい好きですが)オモコロ掲載と知ると途端に怖く無いな…と、なんだか安心しますよね。

ちなみに、わたしがオモコロで印象に残っているのはウォータースライダーのやつです。

ということで、わたしが当初読みたいと思っていた本は、そして恐らく三省堂神保町でパネル展示されていたのは「恐い間取り」であったことが分かりました。

「変な家」と「恐い間取り」……間違えるのも已む無しでしょう。

😂😂

※ちなみにこの記事を書いている時点で、「変な家」のアマゾンレビューは4,243件(!?)、「恐い間取り」は518件でした。商業的には「変な家」の方が人気のようですね。

変なところにいくつ気がつきました?

先ほど紹介した通り、本作は四章構成のミステリー×ホラーのガッツリフィクションな訳ですが、各章ともに、主人公のオカルトライターと友人の建築士による”間取り図推理”が主軸になっています。

登場する間取りは章ごとに変わるのですが、お話としては一つの大きな謎解きとして繋がっていきます。

(クリックで大きくなります!)

本作の特徴をより感じていただくために写真を貼っておきます。

表紙にもなっており、オモコロでも読めるものです。

この間取り、主人公と建築士の分析によれば変なところが「5つ」挙げられていました。

皆さんはこの間取りを見て、いくつの違和感に気がつくでしょう?(5つの中身は後述します!)

総じて言えば

間取りミステリーという新しい試み自体は新鮮でした。

わたし自身間取りを見るのが好きなので、自分でも間取りを見ながら「ここがおかしい?」「それともこっち?」と考えながら読むのはなかなか楽しかったです。

間取り図の特徴ともいうべき、誰でも見たことがあるもののそこから読み取れる情報量は人によって差があることによって、人によって仕掛けに気づく・気づかないが出てきて、だまし絵のように使えるというのが、本作の面白さの鍵なのですね。

しかしながら、”この家に住んでいる家族とは?”という本作の核となる謎そのものと、そこに至るまでのストーリー展開、そして文章そのものは、正直物足りない感じがしました。

平易な文章で、台本のように書かれていて、とっても読みやすいんですけどね。読むペースが早い方は2時間くらいで読めるのではないかな?

ということで、総じて言えばサクッとホラー寄りのミステリーが読みたい方、間取り図の謎に興味がある方、オモコロで試し読みして続きが気になる方……には本作がオススメできます。

それ以外の方には、まぁ、勧めるほどではないかな。
あくまでわたしにとってはですが、人生で読むべき小説は他にあるよねと思ってしまうのでした。(なので評価は★2つです)

※この後は、ネタバレ全開の感想が続きます。未読の方はご注意ください!※

未読の方は立ち入り禁止!ネタバレ感想

私情で申し訳ないのですが、実話っぽい見せ方するのやめて〜😭と思ってしまうのですよね。

間取りって、様々な法律上の規制を守った上で初めて成り立つ代物なので、作り物だと分かった瞬間から「建築家のチェックはちゃんとされているのかな?」「これって実際成立する間取りなのかな?」という疑問が湧いてしまい、話に集中できなくなったのですよね。フィクションなら最初に堂々とそう言ってもらって、設計士の監修も付けていると書いてほしい。(演出なのは理解して居ます、わがままです)

三章に登場するような古い家であれば、住んでいる人が勝手に改造してしまったり、それに協力する大工さんが居たりしても違和感はありません。

ですが、一章と二章の家はいずれも最近建てられたものとのこと。

いくら”片桐家”の力を使ったとしても、これらの間取りって法律クリアできてる?!とかって、本筋に関係ないところが気になってしまったのでした笑

一番気になったのは、二章で出てきた増築された三角部屋なのですが…

この家、建ぺい率大丈夫!?

※建ぺい率:建築面積の敷地面積に対する割合。法律で、この土地は●%まで建物が建てられますよ〜残りはお庭とか空き地にしてくださいね〜というのが決まっている。

成り立っているかプロの方に聞いてみたいわ……と、これまた本筋と直接関係ないところが気になってしまったのでした。

ちなみに一章で出てきたお子さん殺人専用ハウスは、作中で次の違和感が指摘されていました。

  1. 台所に扉のない謎のスペースがある
  2. 子ども部屋の窓がない
  3. 子ども部屋からしか入れないトイレがある(独房?)
  4. シャワー室のある脱衣所と寝室の間にドアがない
  5. シャワー室とは別に1階にも浴室があり、それ自体は例があるが、浴室には窓がない

わたしは、「4シャワー室のある脱衣所と寝室の間にドアがない」は、欧米スタイルの夫婦なのかな?(ガラス張りのお風呂があるホテルってありますよね、そのイメージ)と思いましたし、「5シャワー室とは別に1階にも浴室があり、それ自体は例があるが、浴室には窓がない」は、隣の家とお見合いになるから窓つけなかったのかな?と思いました笑

さてさて、最後に物語の真相についてですが……

徐々に解明されるのではなく、旦那さん(とお母さん)からの告白という形で「実はこれこれこんな訳でして…」と解決されると、「そ、そうですか…」となるというか、スピードが早すぎて驚きようもないのですね。置いていかれた感がすごい。

宗一郎おじいちゃんが信じた五カ条も謎だし(なぜ13歳まで?)、没落した片桐本家に違法建築ガンガンできるだけのパイプとお金があるのも謎だし、やっぱり殺人を偽装するのではなくて司法に訴えるべきだったのでは?と思ってしまうし…

黒幕というか裏切り者がお母さんだった説も、やっぱり真相解明のスピード感が早すぎてもう好きにしてくださいという気持ちになりました。

なので読了直後の気持ちとしては、スンッ🙂という感じでしたね。皆さんはどうだったかな?

ただ、あまりに自分の好みと違ったので逆に印象に残りましたし、誰かにこの気持ちを伝えたくなったり、「これが今のマジョリティーなの!?」と世に問うて見たくなったりもしました。話題性がある、ということかな🤔

恐らく作者さんは、謎解きをしたかったのではなく、間取りに謎が潜んでいるというゾワゾワ感こそを、本作と通じて表現したかったのでしょうね。その試み自体は十分成功していると思います。うん、でもやっぱり、わたしには面白くなかったかな笑

それにしても映画化……わたしは多分、この世で一番好きな俳優さんや女優さんが出演するとしても、見に行かないだろうなぁ笑

最後までお読みいただき、ありがとうございました〜!

なお、当ブログでは個人的評価別にカテゴリ分けをしています。本作は★2つでしたが、もし「自分も五段階評価で2だったわ…」という方がいらっしゃいましたら、ぜひ★4つ以上の作品をチェックしてみていただきたいです笑

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本選びの参考になりましたら幸いです☺