ニヤニヤが止まらない「鳥類学者だからって、鳥が好きだと思うなよ。」がおすすめ

実利の小さい学問の存在理由は、人類の知的好奇心である。縄文人の土偶製作も、火星人の破壊工作も、ダウ平均株価には一切影響を与えない。それでも人は土偶や火星人の動向を知りたくてしょうがない。
 しかし、好奇心があってもきっかけがなければ、興味の扉を開くどころか扉の存在に気付きもしない。鳥類学者を友人に持たぬことは、読者諸氏にとって大きな損失となる。そこで、ボンドに代わって鳥類学者を代表し、その損失を勝手に補填することに決めた。
 そういうわけで、今日から私が貴公の友人だ。見知らぬ中年紳士の話を聞く義理はないだろうが、友人の言葉に耳を傾けるのは紳士淑女としての礼儀である。
 束の間のあいだ鳥の話におつきあいいただき、共に鳥類学の世界を楽しんでもらえると幸いである。

 


 

世にも稀だという鳥類学者の研究の模様を描いたエッセイ的な一冊。
最大の特徴は、タイトルから既に溢れ出ている通り、著者の卓越したユーモアセンスだろう。
文章がいちいち軽妙で笑う。
 
読み終える頃には、鳥類学者とその研究対象である鳥類ー観察するものとされるものー両者の可笑しくも哀しい生態がよく分かるだろう。
 

都民の鳥“ユリカモメ“に交代を呼びかけたり、
ウグイスの秘密を暴いたり、
南硫黄島でハエにたかられたり、
絶滅の危機に瀕する”アカポッポ“を守ったり、
チョコボールでお馴染み”キョロちゃん“の生態を鳥類学的に分析したり、
外来種”ガビチョウ“と戦って負けたり、
吸血カラスの謎を追ったり、
新種発見を巡るドラマの当事者となったり…
 

兎角、鳥類学者の日常は冒険とドラマに満ちている。
わたしに未知の世界に身を投げる情熱と気概があったなら、鳥類学者になっていたかもしれない(遠い目)
 

ご本人も繰り返す通り、鳥類学が発展したからといって、
経済が豊かになるわけでも無く、生活が便利になるわけでも無い。
あまりにも地味な研究ゆえに、鳥類学者の数も少ない。
ゆえに、鳥類学に注目が集まる機会も少ない。
 
そんな中で、その世界の奥深さと、知れば知るほど魅力的な鳥の世界を、
ユーモアたっぷりに描いてくれる本書は、
鳥類学に興味を持つきっかけの本としてはピッタリ!
 
日頃よく目にするあの鳥やこの鳥が、ものすごく機能的に優れている生き物なのだと、
改めて気付かされます。何より、可愛いもんな、鳥!
 
鳥好きな方はぜひ、鳥が苦手…という方も、もしかしたら好きになれるかもしれない一冊。
おすすめです。