「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー」が人生に効く気がした
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様々な賞(以下参照)を受賞しているノンフィクション作品であり、表紙の鮮やかな黄色と少年のイラストが印象的で、以前から気になっていた作品でした。
- 読者が選ぶビジネス書グランプリ2020リベラルアーツ部門
- 埼玉県の高校図書館司書が選んだイチオシ本2019 第1位
- 第13回 神奈川学校図書館員大賞(KO本大賞)
- キノベス!2020 第1位
- We Love Books 中高生におすすめする司書のイチオシ本2019年版 第1位
- 第7回 ブクログ大賞 エッセイ・ノンフィクション部門
- Yahoo!ニュース 本屋大賞2019 ノンフィクション本大賞
- 第73回 毎日出版文化賞特別賞 第2回 八重洲本大賞
何となく日本人がロマンを抱かずにはいられない(なんでしょうね、女王さまとか紅茶とか、高貴な印象が強いから…?)英国のリアルな中学校生活を通じて、英国そして世界が抱える諸問題を透かして見せつつ、全体をユーモアで包みました⭐︎、という絶妙なバランスが素晴らしい良作だったので、ぜひ老若男女、大人も子どももみーんな読んでみたらいいな、と思える一冊でした。
この夏、本書を読書感想文の題材にするお子さん、すごく多いと思うわ。(俗な感想)
以下、本の内容に触れていくので事前知識無しで読みたい派の方はこの辺にしておいていただいて、読み終わったらまた続きを読んでいただければと思います。わたしも事前知識無しで読みたい党員なので…
ちなみに、新潮社の特集ページがだいぶ気合が入っていて試し読みも充実しているので、もうちょっと内容が知りたいな…という方はチェックされたら良いと思いまする。
(絶対に売っていくという強い意志を感じる)
Contents
内容と感想をざっくりと
入学早々行われた新入生ミュージカル「アラジン」でジーニー役を射止めた息子くんだったが、アラジン役の爽やかイケメンが時代錯誤かってくらいのレイシスト(人種差別主義者)だった話、
めちゃくちゃコワモテで近所の悪ガキたちから恐れられている少年が学校のクリスマスコンサートで披露したハードなラップとその顛末、
英国の公立学校教育で必ず行われるシティズンシップ・エデュケーション(日本語だと「政治教育」「公民教育」「市民教育」とのこと)で習うシンパシーとエンパシーの違い…
など、中学生の日常の中で見え隠れする、というよりもあっぴろげに巻き起こる出来事が、イギリスや世界が抱える種々の問題・課題を内包していることに驚き、胸を突かれたような思いがした。
EU離脱によって世界も知るところになった富裕層と労働者間の格差や、移民の流入による市民の多様化とその影に潜む意識・無意識的な差別やいじめ、制服がボロボロになっても買い足すことができないクラスメイト、ドラッグの運び屋にさせられるストリートチルドレンたち。
そういう問題が、現実の英国には存在していること、それそのものにも驚いてしまった。
英国へ留学した友だちや駐在している知り合いから聞く話、そして旅行で一度訪問したロンドンの様子から、英国は世界有数の経済大国であり、物価や家賃はうなぎ上りで、また東京に比べ都心部にあっても緑や美術館が豊富で文化的に成熟していて、東詰めばパブで陽気に飲み始める、石畳と歴史的建造物の街…という印象だったので。
隣の芝は青い、という格言を引っ張り出すまでもなく、そんな“英国像”は事実だったのかもしれないけれど、全体像とは程遠いものだったのだな、と気付いた。
本書の素晴らしさは、上記に挙げたような大人でも悩み込んでしまう種々のテーマを取り上げつつも、全体に軽やかでユーモラスで、明るく読めてしまうところだと思う。誰でも楽しく読めて、感想とともにそれらのテーマを話し合える材料に持ってこいだと思う。例えば親子でとか。司書さんや教育者が推薦するというのもすごく納得。
加えて、息子くんと著者の関係性が羨ましいくらいに素敵なのだ。(ついつい、自分が中学生だった頃の、自分の親との関係性と比較してしまう笑)
思春期の男の子らしいところもありつつ、学校や友人との出来事を母親と“会話”(“”は双方向コミュニケーションであることを強調したくて付けました)するというのは、母親にとっても大きな財産になるのだな、と思った。
わたしも30歳を超え、今後自分の人生において出産・育児を考えることが多くなってきました。将来(あるいは直近)産みたい?産みたくない?仕事はしつづけたい?今後の人生で何を優先したい?と…。
いつも考えることに疲れてしまって結論はまだ出ていないのですが、子どもを産み育てることへの恐れの一つに「こんな先行き不透明な世界に子どもを産み落としていいのだろうか(自分にはその責任が取れない)」という、超漠然とした不安がありました。(勿論個人的な不安の話であり、別の考え方を否定・批判するものでは全くありません)
本書のとある描写が、そのモヤモヤを少し晴らしてくれたので、ここにご紹介したいと思います。本作、人生に効くぞ。
「ダニエルはそれについて何か言った?」
P176より
「最初はショックだったような顔をしていたけど、オリバーがあまりにもクールな感じで冷静に言ったものだから、ちょっと気圧されたような感じで、『時間をかけて決めればいいよ。焦って決める必要ないよ』とか言ってた」
そう言って笑っている息子を見ていると、彼らはもう、親のセクシュアリティがどうとか家族の形がどうとかいうより、自分自身のセクシュアリティについて考える年ごろになっていたのだと気づいた。
「そうか。ダニエルはここのところショック続きなんだね」
「うん」
「しかし、知らない間に成長してるんだね、君たちも」
と言ったら、当然じゃん、というような顔つきで息子が一瞥をくれた。
さんざん手垢のついた言葉かもしれないが、未来は彼らの手の中にある。世の中が退行しているとか、世界はひどい方向にむかっているとか言うのは、たぶん彼らを見くびりすぎている。
そうか…心配されるまでもなく、子どもたちは一人の人間として、世の中にぶつかっては立ち上がり、を繰り返しているのだね。
そしてその体当たり力・起き上がり力は大人たちよりもずっとずっと強くて、大人たちはそれが眩しくて愛おしいんだな。
併せて読みたいこんな本たち
世界の分断をもっと一人一人が知るべきだと思うし、わたし自身も世界を正しく認識したい、という気持ちが最近強くなってきました。
別の記事で詳しくご紹介したいと思いますが、そんな漠然とした願いに、いくつか応えてくれた本たちをご紹介します。参考になれば。
(というか、もっと知りたいという気持ちがあるからこの手の本を読もうって気持ちもになるし、書店やネットサーフィンで目に飛び込んでくるのかもしれない。これが…引き寄せの法則…?)
「ファクトフルネス」著:ハンス・ロスリング
(発売以来、話題になっていますよね。遅ればせながら読みました)
「サクッとわかるビジネス教養 地政学」著:奥山真司
(イラスト盛りだくさん、全編カラーで本当にサクッと読めてるので「なんとなく気になるけど難しそうだしな〜」と思ってる方(わたしか?)におすすめ)
「この割れ切った世界の片隅で」
(note記事です。以下リンクご参照ください)