【ひとり読書旅】新潟の秘境・栃尾又温泉 宝厳堂さん最高最高最高

少し前に、「お一人さま逃亡温泉」を読みました。

☝︎の記事で詳しく紹介しましたが、この本の素敵なところは清潔度が5点満点で評価してくださっているところ。いくつか訪問先候補をメモっていたのでした。

旅がはじまるまで

時は24年6月。
仕事が忙しく、久々に月の残業時間が45時間を超えました。

オフィスに残る最後の一人になった日、夜ご飯を食べるタイミングを失い、でも何故かお腹も減らず、とにかくシャワーを浴びて布団に潜り込んだとき、これが終わったら絶対旅に出てやる……!と心に決めました。

そして行く場所は、この本の中から決めよう……と。

変に頭が冴えて眠れない夜にぽちぽちスマホで訪問先を考え、休めそうな日と宿の空き状況を見比べ、行き先を栃尾又温泉 宝厳堂さんに決めました。

何が良いって、山奥に3軒の旅館だけがひっそり佇む……という都会の疲れた女に刺さりすぎるキーワード

山奥でありながら、新幹線と在来線を乗り継ぎ、予約制の乗合タクシーさえ頑張って予約すれば辿り着ける車運転できない勢にもやさしい秘境

加えて、宿泊予約サイトなどには一切情報を出していないという頑固さ・潔さ。
少しだけお伺いすることに緊張感もありながら、いいお宿である予感しかしない期待感で残業を乗り切りました。

そして。
例年に比べて梅雨らしくない6月末、ひとり読書旅に出たのでした。

結果、タイトルの通り超最高だったので感謝を込めて思い出を書き綴ります!

(土日は先々まで予約でいっぱいの盛況ぶりなので、どうかこれ以上世間に見つからないで……!という気持ちもありつつ、弱小ブログにつき、”宝厳堂さん気になってるけどどうかな……”と悩まれている方の背中を押すような気持ちでお送りします)

宿に着くまでのグダグダ(長い)

先程の投稿を見てお分かりいただける通り(?)、東京から栃尾又温泉に行くには上越新幹線を使います。

何時の新幹線に乗るか……というよりも、まず乗合タクシーの時間が超限定されているので、乗合タクシーの時間から逆算して新幹線の時間を決めましょう。

宝厳堂さんのアクセスページに最新状況が詳しく載っているので必ずチェックすることをお勧めします。

わたしが伺ったときには、11:30の乗合タクシー、13:30の乗合タクシー、15:20の路線バスという3つの選択肢がありました。

チェックイン時間も☝️に合わせて12:10からとのこと。
早い!宿泊客ファーストの姿勢が窺われて、素敵ですね。
(『地元の議員さんにいろいろと意見を申し上げました』というブログのコメントに、「気が強そう…」と若干怯えましたが、全くの杞憂でした😂笑)

せっかくの機会なのでなるべく長く滞在を楽しみたい……と思ったのですが、前日が会社の懇親会で浴びるようにお酒を飲んだので8時台の新幹線は無理だ……と諦め、13:30発の乗合タクシーを狙うことに。

出発の朝、軽い二日酔いを抱えた頭で、えきねっとで新幹線を予約。
残念ながら、3列席の真ん中しか空いていませんでした。
金曜昼に上越めざす人なんていないだろ……と舐めプしてすみませんでした。

折しも、世の中は「百年の孤独」の文庫化に沸き立っている中。
絶対今回の旅で百年の孤独読みたい!と思ったものの平日に書店に立ち寄る暇もなく、東京駅だったら改札内の本屋も充実しているに違いないと思い込み、ブックコンパスさんへ。

全然見つからず、しまったオアゾの丸善に行くべきだったか……と落ち込みかけたところで、平積みにもなっていないラスト1冊を発見。
ネットの様子と扱いが違うんだが???と思いながら購入しました。ヤッタ!
(後で気づいたのですが、発売当初は品薄時期が続いたので、単に品薄だっただけかも。疑ってごめんなさい)

いざ新幹線に乗り込み、約1時間40分で長岡へ。
※長岡より一つ手前の”浦佐”へ行かれる方の方が多いかも。わたしの場合は乗換検索が長岡を指示したので疑わずに乗りました。

長岡といえば、花火大会ですよね。
在来線への乗り換えが20分強あったので改札外に出てみたのですが、駅ビル的なものが栄えてて便利そうでした。大きい無印良品と、書店と、デパコス売り場と、スタバと。
あと新潟といえば!なぽんしゅ館が長岡にもありました。(越後湯沢にしか無いと思ってた)
それなりに時間もつぶせそうですし、忘れ物があっても大体補給できそうでした。

そして上越線に乗り換えて小出駅へ。
平日の昼過ぎだったので高校生がわんさか居て和みました。(授業終わるの早くない?受験生かな)

小出駅に着くのは13:08、そして乗合タクシーは13:30発。
食事はといえば、二日酔い時の謎の食欲に身を任せ、新幹線内で食べたシューマイだけ。
(3列車両の真ん中で、10時台に食べるものじゃなかった。息もつかずに食べ切った)

夜ご飯まで絶対お腹空くし、夜部屋で食べるちょっとしたものも欲しいし……地図で見た感じ、小出もそれなりに栄えてそうだから、駅前で何か仕入れるか……。

と思ったそこの貴方、そしてわたし。全然無理です。
小出駅前、何も無いです。

軽い絶望感を抱えながら駅から見える「地酒」のノボリを見て、おつまみ的なもの売ってるだろうな……と入った酒屋さんは無人で、奥にテレビを見ているであろうおばあちゃまがいらっしゃったので数回そこそこの声量で呼んだものの微動だにされなかったので諦めるなどしました。

そんなわたしと、これから小出駅に行かれる貴方を救うお店は、駅を出た(ちなみにSuica使えないので注意)右手にある富士屋さんです。

この後わたしの心を揺さぶることになる緑川酒造特約店。
そして気の利いたおつまみ、ちょっとしたお菓子もあり、店内の雰囲気もとっても素敵な、おすすめ酒屋さんです。

そこでお菓子を買い込み、すぐそこの駅へ戻りました。

駅前にはたむろするタクシーの運転手さんたち。
タクシー乗車5分前に戻りましたが、結構前からお待ちいただいている雰囲気でした。
(電車の時間に合わせていらっしゃったのだとしたら、お待たせしてしまって申し訳なかったな)

乗合タクシーは、至って普通のタクシーです。
バスが廃止になった代わりに、需要(予約)がある時だけタクシーがバス代わりになるということなのですね。

この時の乗客はわたし一人だけで、栃尾又温泉まで約45分のドライブ。
これで料金400円はすごい。行政サービスの為せる技ですね。

そうして、辿り着いたのはすっごい山奥でした。

宝厳堂さんとドキドキ共同浴場

タクシーを降り立った雰囲気があまりにも非日常だったので、ビデオを撮ってみました。

立ち込めるマイナスイオン。
この日はしとしと雨で、濡れた緑と土の匂い、命の匂いが立ち込めていました。
な、泣ける……これを求めて東京砂漠から来たのですわ……。

宝厳堂さんは坂を登った上にドンと構えていらっしゃいます。

玄関の扉をカラカラ音を立てて開けると、すぐさま女将さんが出迎えにいらしてくれました。

これがですね〜もうね〜素敵でして。
ちょっとでもこだわり強いですよ的な、圧強め女将だったらピャッと萎縮してしまうほど小市民なわたしですが、芯はあれども和やかな佇まいで、すぐさま緊張が溶けました。

そして館内の雰囲気が!客室が!小物一つ一つが!
とにかく素敵でした。
愛情と誇りを持って営んでいらっしゃることが、よく分かる。

拙い写真ですが、ぜひご覧ください。早くもまた行きたい。

栃尾又温泉には3軒のお宿があるそうですが、(調べていないので根拠のない自信ですが)絶対に宝厳堂さんが三軒の中で一位でしょう。
共同浴場内で、「我、宝厳堂の宿泊民ぞ?」とドヤが止まりませんでした。

ずっと畳でゴロゴロしていたい……という誘惑はありつつ、せっかくなので明るいうちから温泉にも入りましょう。
共同浴場へ出発です。

この”共同浴場”というのも結構心理的ハードルが高くて、あまり綺麗なイメージが無いですし、地元民の圧が怖いイメージもあります。

ただ栃尾又の共同浴場、大丈夫です。

写真は撮れないので公式画像から失礼しますが、この写真以上に綺麗です。

脱衣所にはお手洗い(未使用につき綺麗さ不明)、洗面台、ドライヤーあり。
ドライヤーはお部屋のものの方が明らかに高スペックだったので、お部屋に戻ってから乾かしました。

扉を開けてまず驚きだったのが、そこそこ人数がいるのに(5〜6名?)一切の物音がしなくて異様な雰囲気であったこと。

な、なんだこれは……と思いながら体を洗い湯船へ。

つめっった!😂😂

冷たいです。
女将さんから「最低1時間は入って」と指南を受けたので長期戦の構えではあったものの、温まる日は一生来ないのではと思える水温でした。

無色無臭の湯質(というか水質)でこの温度。
逆にいえば、一生浸かっていられそうな心地よさがありました。

ぼんやりと窓の外に広がる木々の緑を眺めながら、いつしかウトウトとまどろみ……徐々に体の内側が僅かに活性する感覚……すごく独特な時間でした。

ちょうどXを眺めていたら「培養液に浸かっているみたいだった」と投稿されている方がいらっしゃって、めっちゃ分かる……!となりました。

ナメック星で悟空が浸かっていた液体、栃尾又だったんか。

金曜の夕方だったからか5〜6名以上は人数が増えず、瞑想に近いまどろみを堪能しました。

※誰かが浴槽内で身動きすることで生じる水面の揺れすら気になる静謐さなので、とにかく静かに入った方が良いです。(宿のお部屋に置いてある案内文を隅から隅まで読む派だったので、そっと入りましょうというアナウンスを事前に読んでてよかった)

1時間以上ぬるーいお湯に浸かった後、体はどんな風になるんだろう?と思ったら、身体の内側が細胞が目覚めたような、味わったことのない感じでした。
温泉に入った後のポカポカするような感覚とも違う、無理矢理喩えると骨が熾火になったような気持ちがしました。熾火よりもずっと低音な……なんだろ、温めた炭?

部屋に戻って読書をしている間に眠ってしまう贅沢を堪能し、夜ご飯を呼ぶ電話で目が覚めました。幸せすぎるーーーー!

食堂の雰囲気も最高ですし、お酒のメニューも眺めて楽しいですし、何よりご飯が美味しすぎる!!!!量もすごい!!!!

そして、日本酒が全て半合から出していただけるという親切さ!
駅前で見かけた緑川酒造さんから、まず「緑川純米」をいただき、その後、これも酒屋さんで見かけて素敵なラベルだな〜と思った「カスレコレクション」を呑みました。

(本当にウイスキーみたいで驚きでした。氷がまんまるなのも素敵)

お米に辿り着くまでに満腹状態でしたが、「お米食べれそうですか?」と聞かれたので、「食べれますっ!」と力こぶアクションしたら女将さんが笑顔でドカドカにご飯持ってきてくださって(お腹が)大変でした。

(おひつ一杯のお米、完食しました)

旅行の時にいつも思うのですが、お風呂に入って髪も乾かして、お腹いっぱいご飯を食べてまだ19時台だった時の多幸感ってすごいですよね。
人間とはこうあるべし、というか。

共同浴場は23時まで利用可とのことですが、何せお腹がはち切れそうなので、朝もう一度入ることにしてあとはひたすら部屋でダラダラして過ごしました。最高。

お部屋へのお酒の持ち込みはNG(事前申告&持込料でOK)ですが、紅茶のティーバッグとドリップコーヒーが置いてあるので飲み物には困りません。
ティーバッグはアーマッドのアールグレイでした。素敵チョイス。

(本のチョイスが良かったです。「黄色い家」ある!)

(「君のクイズ」も!手ぶらでも読みたい本が見つかりそうです)

(紅茶を飲みながら酒屋で買ったお菓子を摘む(まさかの、宿のお茶請けと被る))

一夜明けて、朝食は8時から。
読書旅を名乗っているくせに結局スマホを触り倒してしまいあまり読書が進捗しなかった(あと「百年の孤独」に乗り切れない)反省も、晴れ渡った青空と緑とともに浸かった朝風呂と、美味しい朝ごはんの前には全て吹き飛びます。

(それにしても……お米が美味い!という動画)

10時のチェックアウトまで部屋で読書したり、紅茶を淹れたり、読みながらウトウトしたり……(百年の孤独を読むとすぐウトついてしまう)最後までしっかり心地よい時間を堪能しました。

アッ、帰りの乗合タクシー予約を忘れないようご注意くださいね。
乗車1時間前が予約締め切りです。逃したら、たぶん大変なことになります。
ちなみにわたしは1時間10分前くらいのギリを攻めましたが、特段電話先の対応にオコは無かったです。1時間切ってたらどうなるかは分からない。

乗合タクシーのことをウェブサイトで調べてみると、どうやら乗る場所降りる場所は、小出市街地だったら多少融通が効くようです。
コンセプトが路線バスの代替なので、バス停に停まってくれるらしい。

実は次の宿泊先も栃尾又温泉から歩いて15分程度のところに取ったのですが、周辺にはチェックイン時間まで過ごせる喫茶店や、なんならお昼ごはんを食べるところも地図上見当たりません。

事前に宝厳堂さんを予約する際、メールでご相談させてもらっていました。

さて、お尋ねの件なのですが、
お察しの通り近所にはカフェ等はなく、
乗り合いタクシーで小出の町まで出るのがよいと思います。
大湯に向かう時は、
小出駅を13:30発の乗り合い、
または15:20発の路線バスがありますので、
そちらをご利用いただけると便利かと思います。

小出駅まで行くと喫茶店はないのですが、
途中には、てくたくという老舗の喫茶店もありますので、
ここはお昼を食べるにもおすすめです。
またお越しいただいてから、マップでご案内いたしますね。

ということで、乗合タクシーを予約の際、ダメもとで「てくたくという喫茶店に行きたいのですが、降ろしていただける場所が近くにあるか分からなくて……」
と申告したところ、近くまで行っていただけるとのこと。便利!
※善意でご対応いただいた雰囲気だったので、予約の混み具合や運営方針で変わるかもしれないです。お調べいただくのが確実かと。

そして10:10発の乗合タクシーを目掛け、10時にチェックアウト。
たった一泊の滞在では物足りないほど、もっと堪能したい!美味しい食事ください!と思えるお宿でした。絶対また行こう。

(でもあと丸一日あったら、ぬる湯に浸るのもちょっと飽きちゃうかも?笑)

お次は小出市内のおすすめスポット&2泊目の大湯温泉についてです。

長文にもかかわらず、最後までお読みいただき有難うございました〜!
栃尾又温泉、他の温泉地では味わえない”ここだけな体験感”があることと、鄙びすぎているのに宿の創意工夫が光っているところが超おすすめです。
(HP見る限りですが、”自在館”も良さそうでした)