名作とお噂の「十角館の殺人」を読んで自分の”癖”を再認識した

読書界隈……という言葉がどの辺りを指すのかよく分かっていませんが、おそらくこの方は界隈…と思う、Xで多大なる労力をかけてランキングを集計してくださるひろたつさんという方がいらっしゃいます。

ひろたつさんがまとめるランキングの中でも、特に反響が大きいまとめ「最強のミステリー小説10選」にて、常にトップを走り続けている作品があるのです。

そう、十角館の殺人です。有名作品ですね。本作を皮切りにシリーズ作品も多数出ています。

恐れ多くも児童文学生まれミステリー育ちを自称するからには、これはもう読まねばならぬ。むしろ早急に読んでおかねばならぬ。

そう思い続けて数年が経った頃、ようやく本書に手をつけたのでした。
(きっかけは、神保町の共同書店passage SOLIDAで見かけたことでした)

感想はですね……一言で表すなら「もはや古典の域に到達しているため、新鮮味に欠ける」でした。

お好きな方はごめんなさい。

確かに面白かったんですよ!?
面白かったのですが、如何せん本作自体が「そして誰もいなくなった」のオマージュであり、タイミングが悪いことに「そして〜」を直近で読んでしまっていたのです。

なので「………同じやんけ!」としか思えず。(エセ関西弁失礼します…)

1987年刊行、ほぼ同い年の本作。
長年愛されてきたからこそ、もう古典の域に到達しているというか、「今読んでも斬新」であって、あの手この手で読者を驚かせてきた現代の小説たちを読んだ後だと、「サクサク人が死んで分かりやすいなぁ」などという非道な感想しか出てこないのでした。

(同年代の作品を”古典”と称することへの、自分に与えるダメージも相当なものである)

それから、これもわたしの問題なのですが、30代も半ばに差し掛かったことで年々「ミステリー」の味わい方が変わってきたと申しますか。

どうやらわたくし、華麗なトリック!奇想天外な展開!がミステリーを読む目的なのではなく、謎が謎であることを味わいたいお年頃になってきたようなのです。

もともと、人間関係から栄養を摂取するタイプのオタクだと自認しているのですが、それに拍車がかかっているご様子。
「はっきりとわからない不思議な事柄」を明らかにせずにはいられない人の心の動きや、事件が起こるとすれば当事者の心理に重きを置きたくなるのです。

こうなってくると、もはや事件は舞台装置・手段でしかなく、それらの奇抜さそのものを(当然、面白ければ面白いほど嬉しいのですが!)目当てにはしていないことに気づいたのです。

本作・十角館の殺人は確かによく出来ていています。
根強いファンがいることや、館モチーフのグッズが出ることも大納得な訳ですが、極めて個人的な好みで言えば「普通」になってしまうのでした。

なので、わたしと同じタイプの方には「興味があればどうぞ」ですし、逆に謎解き大好き!な方には「自信を持ってオススメ!」になります。そういうタイプの本です。

名作であるが故に。
島と本土の二重の謎解き構造や、密室殺人事件が見事に展開されるが故に。
却って「”新本格”はちょっと違うかも」という己の癖(へき)に気付かされたのでした。ちゃんちゃん。

※恩田陸・桜庭一樹作品が好きなのは”そう”だからなのですよね。あと漫画になりますが清水玲子先生の「秘密」が、”業”たっぷりで大好きです。という納得