ちゃんと本格、なのに新感覚。今村昌弘「屍人荘の殺人」について

ちなみにアイキャッチ画像はサンライズ出雲の車中です。※年始の三連休で行ってきました!(自慢)

あら随分と軽い感じですね……ハァーン王道ね、本格ってそういう……えっっ!?!?wwwwどうなるwwwwあらあら……まぁそうなりますわな……オオーお見事……ヘェー…………FIN

って感じの作品でしたね。お読みになれらた方、どうでしょう?笑

2019年発売の本作。その年のミステリ界隈に新星のように現れ、「屍人荘の殺人」シリーズはその後も好評続刊。神木隆之介さん、浜辺美波さんが主演で映画化もされましたね。

今村さんの著作を今回調べて気がついたのですが、櫻井翔さんと広瀬すずさんのドラマ「ネメシス」にも関わっていらっしゃるのですね。(途中でリアイアしたものの、荒唐無稽で面白かったです)

ちなみにWikipediaの著作一覧見て、「あれ…意外と少ないな……なんかちょっと前に、江戸の火消しの話とか……他にも最近賞獲られてなかったっけ……?」と思ったら、それは今村翔吾さんでした。今村違い!めちゃくちゃ勘違いしてました。

さて本作の話に戻りまして、やっぱり中身に触れてしまうと面白さ半減になってしまうので、気になったらもう読んでください=気になるなら読んでも大丈夫なくらい面白かったとしか言えないです……。(毎回こうなっちゃう)

なので精一杯、読んでいる間のわたしの感情を冒頭に表してみたのですが……笑
一つ申し添えるとすると、ちゃんと本格、そして新感覚、この掛け合わせが各所で評価されているのだな、ということです。
文体は軽めなので、多少の好き嫌いはあるかもしれませんね。わたしは読んでいるうちに気にならなくなりましたが。(嘘、ちょいちょ気になりはした)

参考までに、書き出しの部分(プロローグではなく第一章の方)を引用しておきます。ここは意図的に軽く書いているのだと思いますが。

「カレーうどんは、本格推理ではありません」
 俺はそう告げた。
 当然カレーうどんはうどんの亜種であって本格推理どころか本格中華ですらない。そんなことはわかっている。俺が言いたいのは、ここでカレーうどんの名を出すのは非論理的ということだ。

読み終わった方とキャッキャ言いたいタイプの作品には違いないないです。
以降はわたしの一人キャッキャ(ネタバレ感想)が続きますので、未読の方は絶対にお読みにならないで!

ネタバレ感想:映画は酷評らしいですね

急にバイオハザード!?と思わずニチャついたのも束の間、あ、明智ィ〜〜!ってなりましたよね、まず。
これで明智がうっかり生きてたらもうどうしようもないま、そういう時代ですか…と世を儚むところでしたが、比留子ちゃんに引導(物理)を渡されてて、そこはとても良かったです。

連続殺人が起こる中で、ゾンビの仕業?それとも人間の仕業?と読み手と探偵たちを混乱させ、事件は解決するのか?そして生きて帰れるのか?斑目機関の謎はどうなる?と、読みどころも多重多層的で、ぐいぐい先に読み進めたくなる吸引力がありました。

解決編もお見事な仕上がりでしたよね。
散りばめられたものが積み重なり犯人やトリックという到達点に達する、この爽快感!
推理小説ならではの気持ちよさを味わせていただきました。

それじゃ本作が傑作かというと、うーん…わたしにはそうは感じられませんでした。

比留子ちゃんと葉村くんのイチャつきには正直全く興味が持てなかったですし、立浪さんの不憫な過去もどうでも良かったし、静原さんの動機も理解はしつつも、流石に立浪殺しの難易度高すぎるのでは?とも思うし、結局斑目機関については何も解明されないし……傍点多すぎるし……助手になるのは断るけど愛好家部員としてなら良いってソレどういう線引きってなるし……

とツッコミどころもすごくて、続編であろう「魔眼の匣の殺人」「兇人邸の殺人」を読むかと聞かれると、おそらく読まないかな笑

この感じ、こちらも新感覚?ミステリとして好評を得た「medium 霊媒探偵 城塚翡翠」を読んだときにも同じ気持ちになりました。(表紙のイラストの雰囲気も、何となく共通してますね)

読めばちゃんと面白い、評価される理由もわかる、でも自分には合わない。
これは一体何によるものなのだろう?

出オチ感というか、文体に依るものではない”軽さ”なのかもしれません。
児童文学やライトノベルなどのライト文芸の中にも(年々読まなくなっていますが…)素晴らしい作品は数限りなくありますし、伊坂幸太郎作品だってあの”軽さ”が売りであり、大好きな作家さんです。

つまりわたしにとって大事なのは、物語を通して描きたいもの、通底するメッセージ、あるいは味わい、読み心地。読み手の感情や琴線に爪を立てられる感覚。読み手を揺さぶるものたち。
それが欲しくて小説を読んでいるのかもしれません。
本作を読んで考えて、少し浮き彫りになった気がしました。

だって、身近に本作を読んだ人が現れたとしたら(仮に会社の先輩だとしたら)、
「え、読みました!?ウケますよね!ゾンビて笑笑 明智すぐ死ぬ笑笑 新感覚でしたよね〜」
ってなってしまうものな。軽い軽すぎる。

映画についてもキャストすら知らなかったので、今回調べて「ゴジラ-1.0じゃん!」と思いましたが、映画.comの評価が5点満点中2.8点で笑いました。平均がよく分からないのですが、これは酷評と言って差し支えないのでは?

恐る恐る口コミを読んでみると、映画の尺の問題からか、端折られている部分が多いようで、そこは少し不利ですよね。あとどうしてもゾンビワラワラは、ハリウッドレベルで映像に力が入っていないとコミカルになってしまうのかな?とも思いました。予告編も見てみたけど、浜辺美波さんがとにかくかわいいし、館の作り込みが良い感じで面白そう〜(ゾンビが一切出てこないから笑)とは思います。中村倫也さんが大学生役は無理では…?と思ったけど予告編の限りではハマっていらっしゃいますし。

ただこの予告編を見て本編を見たら何じゃこりゃ!になってしまうので、映像化には不向きな作品だったのかも。映像化したくなる気持ちも分かるけれど。

あれこれ書きましたが、わたしは全ての創作者を尊敬する派(だってわたしには絶対こんな作品、考えもつかないし、書けないし、完遂できない!)なので、今村さんには敬意しかありません。お疲れ様でした!

長文にも関わらず、最後までお読みいただきありがとうございました!
知り合いの人と、ちょっと本の感想をあーだこーだ言い合う、あるいは漫画雑誌を友だちと顔を突き合わせながら読む、そんな雰囲気で読んでいただけたら嬉しいです。ありがとうございました。