伊藤忠元会長が語り尽くす読書の魅力「死ぬほど読書」を読んだ
読書術、という言葉を聞くとそわそわしてしまいます。
読書を愛する人はみんな、「もっと効率よく読みたい、読んだ本を記憶に留めておきたい」と思うはず。
そんなうまい話は無いよなと思いつつ、あったらいいなとわずかな希望を抱きながら、
「読書術」「読書」とついた本を読みあさることが多いです。
確かAmazonのサジェストで出てきたのをきっかけに、読んでみました「死ぬほど読書」。
表紙をめくった袖部分の著者紹介が力強くてびびった。
…伊藤忠商事(株)に入社。九八年に社長に就任すると、翌九九年には約四〇〇〇億円の不良債権を一括処理しながらも、翌年度の決算で同社の史上最高益を計上し、世間を瞠目させた。…
つよい(確信)
生きる世界の違う感じがすごい…と震えながら、読み進めることにしました。
Contents
目次はこんな感じ
- 第1章 本に代わるものはない
- 第2章 どんな本を読めばいいのか
- 第3章 頭を使う読書の効用
- 第4章 本を読まない日はない
- 第5章 読書の真価は生き方に表れる
- 第6章 本の底力
目次にもそれがよく表れていると思うのですが、
この本は、読書術というよりかは、丹羽さんの人生哲学を読書という切り口で描いたもののように思えました。
まえがきの印象って大事だと思うのですが、
丹羽さんの文章は(思いの外)柔らかくて、優しい響きがしたなあ。
そして、本のエッセンスがまえがきでしっかりと語られていて、好印象だった。
人は自由という価値観を求めて、長い間、闘ってきました。努力し、工夫し、発明して進歩してきた果てに、いまの自由な社会はあります。
それは人類史上、かつてないほど自由度の高い環境といっていいかもしれません。
しかし、「何でもあり」の世界は一見自由なようですが、自分の軸がなければ、じつはとても不自由です。それは前に進むための羅針盤や地図がないのと同じだからです。それらがなければ、限られた狭いなかでしか動けません。
では、自分の軸を持つにはどうすればいいか?
それには本当の「知」を鍛えるしかありません。読書はそんな力を、この上なくもたらしてくれるはずです。
すなわち、読書はあなたをまがいものではない、真に自由な世界へと導いてくれるものなのです。(P7)
なんていうか、こう、若者の抱える悩みの本質を突いてる感じね!
自由なようで不自由、なぜなら軸がないから。どこに進んだらいいか分からないから。
もやもやの形を知るだけで、不安は解消されるから、
この手の悩みを抱えがちな、高校生や大学生が読んだらいいな、と思う一冊です。
こういう文章を読むと、「ああ、この人はきっといい人なんだろうな…」とほっこりします。
めっちゃ敏腕で、多分若い頃はめちゃくちゃ怖い人で、でもいろんな修羅場をくぐって丸くなられて、
今は特に若者になんとか道を示してあげたい…と思ってらっしゃるのかな、と…。
要約と印象に残った部分
注)要約と言いつつ、わたしの解釈によるものなので、そこは悪しからず!
ずばり、丹羽さんにとっての“読書の魅力”とは、
自らの頭で考える力を養えること
これなんだな、と理解しました。
氾濫する情報の中で真実を見抜く力、論理的にものごとを考える力、
心を鍛え自らをコントロールする力(「動物の血」「理性の血」の比喩が分かりやすかった)…
これらのことが、自らの経験に基づく学びとしてしっかりと根付いていて、説得力があった。
社会人の端くれとして、伊藤忠時代のトラブル対応は読んでてワクワクしたな。
ドラマみたい(小並感)
特に、「働くことの意義を訴えたい!」という熱を感じた。
仕事は、私にいわせると、人生そのものです。食べるためとか、お金を儲けるためとか、家族を養うためとか、そういう類のものだけではない。人生から仕事をとってしまえば、何も残らないといってもいい。仕事をすると、喜び、悲しみ、怒り、ひがみ、やっかみなど、さまざまな思いを味わうことになる。こういったあらゆる感情が経験できるのは、仕事以外にはありません。(P42〜43)
本当に仕事がお好きなんだな、自分とは違うな…と思いかけて、
そうやって「違うから」と遠ざけることは、多分丹羽さんの本当に伝えたいことと違うのかも、と思い至った。
ここでおっしゃっている“仕事”は、ただ会社に属して“働く”ことだけを指すんじゃない。
たぶん突き詰めると、「なぜこの世に生まれたのか」ってことなんだな。
お前はこの世に生まれてきて、何を成すのか?と。
俺はこんなことを成したし、まだ足りないと思ってるぞ、と。
使命といったら大げさかもしれない、多分仕事の大小や貴賎はなくて、
これと思い定めたことを達成すること、それが生きる意義なのだと、言いたいのではないかなあ。
「そんな大層なことおっしゃらずとも…」って逃げ出したくなるけど、笑
でもどっかでちゃんと考えなきゃいけないことなんだよね。
それと、「考える読書」とは何か、を改めて考えさせられた(考えるが多い)。
丹羽さんは、「小説を読んでも考える力は鍛えられる」とおっしゃっていました。
小説を読んでも、その時代背景を知ろうとすること、著者の意図を掴もうとすること、
ただ読むだけではない考える読書…実践しなければナァ、と思った。
最近の自分の読書体験に当てはめるなら、
たとえば、「開かせていただき光栄です」や「アルモニカ・ディアボリカ」を読んで、
当時のロンドンの都市・政治・民衆の生活を知りたいと思い、調べること。
更に、同時代の江戸はどうだったかまで調べて、比較して、整理すること。
たとえば、「消滅世界」を読んで、
人工授精の変遷や、それによって世帯数に変化が生まれているのか調べてみること。
そこまでして初めて、「この本を、髄まで味わった!」と言えるのではないかな。
わたしがしたかったのは、そういう読書ではなかったかな。
そんなことを改めて思いました。
若干お説教くさいところはあるけれど笑
さらっと読めてしっかり味わえる本だと思いました。興味があればどうぞ、の星みっつです😇