王道ファンタジーって…やっぱりいいなあ…と思った「青の王」の話



夏休みの旅のお供に読んだ本。いやあ夏らしい爽やかな、超王道・ど真ん中なファンタジーだったなあ。ピュアピュアな作風に仕事で荒んだ心が洗われていくようだった。安心感のある物語っていいよね。

記憶喪失の囚われの少女と奴隷に落とされるところを逃げ出した少年が出会う!魔物を従えるテンプレの悪役!空を駆け稲妻を捉える女船長!少女の秘密と世界の謎!
こんな具合に、みんな大好きだよね!って要素がバランスよく詰まってるのです。わたし?大好物です(真顔)。

小説を読むとき、多かれ少なかれ頭の中で映像をイメージすると思うけれど、本作はずっとジブリと細田守(サマーウォーズ等)を足して二で割ったようなアニメ映像が頭の中を流れて居たなあ。

映像化にもってこいな見せ場も沢山あって、「あれ、これ金曜ロードショーで見たことあったっけ?」と錯覚してしまいそうなくらいだった。笑

対象年齢は高校生くらいなのかなあ、多分1時間とかからず読んでしまったし、あっさりしていると言えば、あっさりしてたかも。

おもーくてくらーい小説を読んだ後に、お口直しというか、気分転換に読むのがピッタリな作品だと思った。さらっと読めて読後爽やかな王道ファンタジーです。

あらすじと感想

砂漠に咲く奇跡の都ナルマーン。王宮の上空では翼をもつ魔族が飛び交い、豊かな水をたたえた池の中には魚や竜の姿をした魔族が泳ぐ。ナルマーンの王は神に選ばれ、魔族を操る力を授けられたのだ……。そんなナルマーンに住む孤児の少年ハルーンが出会ったのは、不思議な塔に閉じ込められたひとりの少女だった。ハルーンは、自分の名前も知らないというその謎めいた少女を助けて塔を脱出するが、少女はナルマーン国の存亡に関わる重要な鍵を握っていて……。

というお話。
ほらもう王道でしかない!

腹ペコの少年少女が、きっぷのいい女船長に助けられて、美味しい食事を供されるシーンなんて、もうテンプレというかなんというか…いいよね美味しいご飯って。生きるのに大事だよね。

 出来立てなのだろう。どの皿からも湯気が立ちのぼっている。詰め物のされた大きな鳥の丸焼きに、香草をまぶした羊肉の串焼き、アーモンドと干し葡萄が入ったバターライス、チーズやひき肉を入れたまんじゅう、魚の団子、ヨーグルトをかけたサラダ、レモン風味の豆スープ、エビのスープ、瓜の炒め物。
 果実の盛りあわせ、焼き菓子、練り菓子、シャーベット、香辛料を入れた果実水と、甘いものも充実していた。
「おいしそう!」

いや、ほんと美味しそうだな。お腹すいてくるわ。
美味しくてあたたかい料理を味わいたくなってくるよね。豚バラでも焼こうかなあ(美味しくてあたたかい料理の代表格)。

とにかく安心して読んでくれ、というのが最大にして唯一のメッセージです。
テンプレといえばテンプレ、どこかで見たような話かも…と言ってしまえばそれまでかもしれないけど、みんなが心の何処かで求めてる「王道」に、正面から応えてくれる作品って、それはそれで稀だと思います。

最近の映画も、「いやあ、そこ捻らなくても…!」ってモヤモヤすること、あるじゃないですか。バッドエンドで終わるSFとか。とにかく予想さえ裏切ればそれでいい、みたいな。

そうじゃないんだ、観客の求めてるものを、高レベルで実現してくれればいいんだ…!と思ったりしませんか。

そんなあなたに、うってつけ…!本作…!(唐突な福本伸行)

※正直に言うと、ハードなファンタジーも大好きなので、「もしやこの人、死んでしまうんじゃないの…?」などと勘ぐって勝手にハラハラし、そんなことは起こらないので勝手に物足りなく感じちゃいました。作品は全く悪くないのです、すぐ誰か死んじゃうんじゃないかって、疑ってしまうのです…。笑