話題の「かがみの孤城」がずるいほどに良作だった
あなたを、助けたい。
学校での居場所をなくし、閉じこもっていたこころの目の前で、ある日突然部屋の鏡が光り始めた。
輝く鏡をくぐり抜けた先にあったのは、城のような不思議な建物。そこにはちょうどこころと似た境遇の7人が集められていた――
なぜこの7人が、なぜこの場所に。すべてが明らかになるとき、驚きとともに大きな感動に包まれる。
生きづらさを感じているすべての人に贈る物語。一気読み必至の著者最高傑作。
煽り通りの良作だった!
「不登校の子どもたちを描いた作品だ」というのは
バズり始めた時に見て知っていたんだけど、
別にそういうのは興味ないなあ😇と思っていたので、
ひたすらに図書館で順番待ちしてようやっと読みました。
長編ながら読みやすいのでサクサク読み進められて、数時間で読み終わった。
奇妙な状況下で出会った見ず知らずの七人が徐々に打ち解け、
絆が生まれ、困難に挑み、謎は解かれ、そのさきに感動が待っている。
そんな濃厚な数時間がとても手軽に味わえる、なんていうか親切な作品。
(例えるならそう…大長編ドラえもんのような…大人も思わず涙するみたいな…)
(貧困な発想)
読んでみると、登場する子どもたちみんなの、
その弱い部分に「ああこれはかつての(あるいは進行形の)わたしだ」と思わせる個性があった。
(母親の顔色を伺う、見栄を張る、誰も自分を分かってくれないと嘯く……)
誰にでも多かれ少なかれある感覚を、抜き出して、肥大化させて、
きっと登場人物を作っていってるんじゃないかな。
だから誰でも思い当たる節のある、共感できる人物が生み出せる。
(占い師の手法と一緒ですね)
辻村作品はまだ3作品しか読んでないけど、
「傷ついた人の味方」って印象が強い。
圧倒的に正しい感じ、批判を許さない感じがする。
泣いてしまうし、読後感はいいし、読んでよかったなって思うんだけど、
なんていうか、眩しすぎるのかもしれないなあ。
※個人の感想です
少し前にドライブしてて「いきものがかり」が流れた時にも同じことを感じたことを思い出した。
聞けばいい曲だと思うし、好きな人がいれば「いいよね」って言えるし、カラオケでも歌うし。
批判を許さないというか、批判が入り込む隙間もないほどの「正しさ」。
※個人の感想です(強調)
そんな「ずるい」良作だったなあ。
(褒めてますよ!みんな読んで感想を聞かせてほしいよ!)
ちなみに、少年少女がお城で過ごす本といえば、
恩田陸さんの「七月に流れる花」「八月は冷たい城」という連作があって、
こちらはもっとダークで不穏なので、
ちょっと違う感じも読みたい…と思った方にはオススメです😂
以降、ネタバレ感想です。
未読の方はご注意を!
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登校したのに会えなかったところで時代がずれてるのはうっすら気が付いたけども、
“おおかみさま”がリオンのお姉ちゃんだというのは分からなかったなあ。
あと喜多嶋先生は一捻りあるぞ……?と疑っていたけど、
アキだったとは全く気づきませんでしたねえ。(節穴)
閉鎖空間、集められた七人の男女、それぞれの過去が明かされていくところ、
時代のズレでミスリードを誘う、こんな仕掛けたちが「冷たい校舎の時は止まる」に共通するところで、
“辻村作品を読み慣れている方は仕掛けに早々に気づく”という感想を見かけてそれも納得だなって思った。
そういう意味で恩田陸さんは「この作品は、進化し続ける辻村深月の新たなステージでのデビュー作だ。」とコメントを寄せたのかなあ。
ちなみに「泣かされた……(泣いただけ)」と思ったのは、
お母さんが担任の先生とやりあうところ(お母さんがまともな人だったのがほんと救いだよね)、
リオンくんとおおかみさまが会話するところ(リオンくんは「こんな出来た中学生居ないよ!」と思いながら読んだ)
でした。いやもう泣くでしょ。これは。
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