美少年とオカルトって素敵なマリアージュですねってなる幻の名作「霊応ゲーム」

あなたは幻の名作、霊応ゲームを知っているだろうか…

「きみに手出しをしようなんて奴は、だれもいないさ。そんなことをしようとするやつはだれだって、このぼくが殺してやるからな」

つよい(確信)

幻の名作というのは、いまの書影とは似ても似つかないもっとおどろおどろしかったハードカバー版が絶版になったものの、(※わたしは口コミでこの存在を知り、ハードカバー版で一度読みました。震えた)「復刊ドットコム」で多くの復刊を望む声が寄せられ、文庫本として復活を遂げたエピソードから言われている煽り文。

初読時、高校生か大学生の頃だったかな、かなり夢中になった作品で、最近になって再読したので、改めて作品の魅力を紹介してみようと思います。

良家の少年たちが集まるパブリックスクール、閉鎖された空間だからこそ当たり前のように起こる、少年たちの諍い。それは、ただの日常だったはずなのに…(不穏)

みたいなお話です。

カリスマ美少年が災厄をまき散らす狂気が読みたい人(そんなピンポイントに、あ〜それ探してたの!みたいな人いないわ)には絶対おすすめ。

出会ってはいけない二人だった、寄り添ってはいけない魂だった…とはそれなんて名文。
二人が仲良くなるたびに、周りがどんどん不幸になっていくという哀しい対比、友情と恐怖で縛られた逃れられない関係性…どんどん高まっていく緊張感がすごいんだ。
もうすぐ大変なことが起きてしまう、と思いながらも避けようのない感じ。「こわいやばいこわいやばいこわいやばい…」と震えながらも、ページをめくる手が止まりませんでした。

(同じ恐怖感を例えるなら…五十嵐貴久山の「リカ」と同じくらい怖い。いや〜リカほんとやばいですよね。シンプルに怖い。読んでて逃げ出したくなる感覚ってなかなか味わえないよね。ページ閉じればいいって頭では分かってるのに、読むのを止めるのもそれはそれで怖くて、そのまま読み続けちゃうんだよね)

本作は、リカみたいな150キロストレートボールみたいな怖さではなくて、外堀がどんどん埋まっていくのを見ている外野(※わたし)が、「ジョナサン(主人公)逃げてーーーー!!」っていくら叫んでもジョナサンにその声が届くことはない、みたいな怖さ。(分かりづらくて申し訳ない)
ホラー系をあまり読まないからアレですが、想像の斜め上を行ったよ。恐怖が。

でも、蜘蛛の巣に捕らえられた虫はかわいそうだけど、その巣が形作る幾何学的な美しさや獲物が捕食される様に、ともすると仄暗い美しさを感じてしまうような……、ジョナサンはそっちに行かないほうがいいんだけど、でも行ってしまったその先を見せてくれ、みたいな、そんなやや倒錯的な喜びをももたらしてくれる、ちょっと危ない本でもあります。

閉鎖的なパブリックスクール、どこにも行けない少年たち、横行するいじめや同性愛に対する偏見と排除。そんなキーワードに興味がある人は、読んだら絶対面白いよ!
※同性愛を匂わせる描写がありますが、万人が読んでも受け入れられるレベルかと思います。

今更ストーリー紹介

気弱だけど優しい気質なジョナサン少年が、誰とも群れない孤高の悪い子・リチャードとひょんなことから仲よくなるというストーリー。

リチャードがね、もう存在自体がチートなんだよね。フィクションの醍醐味だよね。ここでちょっとだけリチャードに関する描写を引用してみましょう。

(前略)リチャードは抜群に頭がよくて、自信満々で、ごくまれに自分から進んで口をひらいたときは、すばらしく弁舌さわやかだった。
 そして、何より目立ったのは、彼の思わず目を瞠るような端正な容貌で、リチャードは長身で運動選手のような体つきで、漆黒の髪、男らしい整った顔立ちに恵まれ、深く窪んだ鋭い青い目は、世の中に対して燃えるような軽蔑の視線を投げかけ、たえず挑戦状を突きつけているようだった。

い、イケメェン……

教師や同級生からいじめられているジョナサンくんは、そんなリチャードにに「きみみたいになれるんだったら、どんな犠牲を払ってもいい!」と告げます。
(もう序盤からフラグびんびんですわ。だめだよ犠牲とかそういうこと言っちゃ…)
そして、リチャードとジョナサンは急速に仲良くなっていくのです。

リチャードの手助けもあって、いじめられっこの地位を返上しようと奮闘するジョナサン。序盤は不良ボーイと心優しい少年の交流が爽やかに描かれていて、まあ眩しくて爽やかで微笑ましい。序盤はね。
そんなどこにでもあるはずの出会いだったはずなのに、まさかこの交流が、後にあんなおぞましい事件を引き起こすなんて誰が想像できただろうか…(反語)

はあ楽しい。笑

以下、ネタバレ感想が続きます。未読の方はご注意くださいませ!

ネタバレ感想

うーん、初読時はリチャードの執着…というより度を越した妄執ぶりにジョナサンと一緒に怯えながらも、「美少年の執着と偏愛…孤高の美少年がいつしかメンヘラに…」などと、自分の嗜好の新たな扉が開いていく感に悶えていた訳だけど。

二回目に読むと、大人たちの諸事情がこんなにきちんと書かれていたんだな、と気づく。ほんと、最初に読んだ時はリチャードとジョナサンのことしか考えてなかったんだな。笑

新たな発見がある一方、結局ヴィシャ盤ってなんだったのかな、とか、リチャードはなにを呼び寄せてしまったのかな、とか、ヴィシャ盤が引き金なのかそれともリチャードが元々持っていた性質が問題だったのか…結局リチャードの力って何だったのかな…とか、オカルト方面の解決が何も為されていなくて、正直、初読よりも尻すぼみな印象を持ったかな。

それでも、ジョナサンがリチャードに依存しているように見えて、実はリチャードこそがジョナサンに強く依存していくこと。
ジョナサンはリチャードを理解したいという気持ちを持ちつつ、彼の異常性への恐れやジョナサンの友人たちとのやり取りを経て、とうとうジョナサンはリチャードを拒絶してしまう。
その時の、リチャードの心に決定的な亀裂が入ってしまう様子が、何とも痛ましくて…。怖いだけじゃなくて、過敏にヒリつく青少年の心理描写を丁寧に描いている作品だとも思うの。

あとやっぱり、ハッピーエンド好きだから、考えられる限り最悪の結末になってしまったのが、やっぱり悲しい……何でみんな直ぐ死んでしまうん(節子)。

最後にリチャードの凄惨な死に際を読んで、彼は報いを受けた訳だから仕方ないのだけど、やっぱり救いが欲しかったなあ、と思ってしまう。
後味が悪いというか…まあ、ここからハッピーエンドでも御都合主義でしかないのだけど…(ぐちぐち)