#私を読書沼に落とした小説10選 を考え出したら仕事が手につかない

ちょっと前からツイッターで時々流れてくる#私を読書沼に落とした小説10選というタグ。

めちゃくちゃアツいやないかい!

よく見かける「名刺代わりの小説10選」も眺めるの大好きですが、今回のお題(お題?🤔)は何がすごいかって、読書に目覚めるきっかけになった本を紹介してしているので、呟いた方の本の好み・原体験・性癖が十作品にぎゅーーっと詰まっているところなのですよね。

児童書を多く並べている方もいるし、最近のヒット作を並べている方もいて、その人がいつ沼に落ちたのかが如実に表れるのも面白い。

眺めていると、まさにわたしの沼(わたしの沼?🤔)と同じ沼(同じ沼?🤔)(しつこい)を数多く挙げている方もいて、そうするともうすごくフォローしたくなります。無言フォローしまくりですすみません。

さて、そうなってくると、わたし自身もぜひこのタグを使ってみたい。10作品書き連ねたい。

そう考えてしまったら、もう仕事が手につかない訳ですよ。何入れようかなって考えちゃって。あれかなこれかなって考えちゃって。しかも、10作品を選んだら選んだで、とてもタイトルだけ並べてツイッターで呟くだけでは気持ちが収まらなくなっている訳ですよ。

ということで、(いつも前置き長くてすみませ…)このまま仕事に集中できないのも困るので、#私を読書沼に落とした小説10選を解説とアピールポイント付きで紹介させていただきます。行き場を失った魂の叫びを供養するような気持ちでお読みいただけると嬉しいです。笑

いちご/倉橋燿子

読書沼に落ちた作品かぁ…としばらく思い出に浸っていた時に、天啓のように思い出した一作。この作品に思いを馳せたの、多分20年ぶりと言ってもいいのでは…?

当時とても大好きで何回も読み返した感覚は思い出せるのだけど、内容は全く覚えていないのだよね、これが。
たしか…そばかすがいちごの種みたいだからって「いちご」と呼ばれてる女の子が、実は動物と会話ができて、郊外でスローライフを送りつつ、そのスローライフ先で男の子といい感じになる話、だったような…?多分全7巻くらいで、中盤でいちごちゃんが激しく傷つく一幕があって、そこでわたしもわんわん泣いたような…?

あまりにうろ覚えだったので、一通り書き終わった後にセルフ答え合わせしてみました。
青い鳥文庫から全5巻(意外と惜しい)発売されていて、小学5年生のいちごちゃん(あっ本名だった)はアトピー(そばかすじゃなかったね)に悩んでいて、お父さんの仕事のため、東京から信州の山のなかに一家で引っ越してきた、という物語でした。いい感じになる男の子もちゃんといて、光くんと言いました。(そうそうそんな男の子だった。大人っぽくて優しい子なんだ確か)
結構近いところを突いてて安心したけど、うーーーーーん、動物と話せる設定は完全に嘘かもしれない。笑
さりげなく電子書籍化済なので、ちょっと読み返してみようかなあ。

こうやって記憶を辿っていると、その時に感じていた憧れや共感した思い出もふわ~っと(うろ覚えなのでふわっとしてる)蘇ってきて、ああ本当に懐かしな、そういえば大好きだったな、と思い出す。更に幼少期には絵本も読んでいましたが、主体的に、自分で選び取って読んだ物語として、「いちご」はかなり印象的な作品です。

空色勾玉/荻原規子

はい来ました児童書界の有名作品。タグを辿ってみても本作を挙げている人が沢山いらっしゃいましたみんな友達だ。

もうね、散々好きだと言っているのでご存じの方もいるかもしれませんが、これぞ沼って感じだよね。
神様たちがまだ地上を歩いていた頃の物語。人と神が争い合う中、土着の民の娘として快活に暮らしながら、神の一族に惹かれる少女狭也が、神の一族の宮に召し上げられ、そこで神の一族ながら幽閉されている少年稚羽矢と出会うというボーイミーツガールアーンドファンタジー!な超名作です。ああもう大好き。
「勾玉三部作」と銘打たれている本作と、続く2作品は、数多くの少女(あるいは少年)を日本古代ファンタジーの沼に沈めてきた記念碑的作品だと個人的には思っている。
しかも、発売から30年が経とうとしている中で、いつ読んでも、何歳が読んでも、新鮮に面白いという普遍性よ。やばいよ。
もうそろそろ長年の功績を称えてアニメ映画化されてもいいと思う。いや、むしろ資本力のあるネトフリとかががっつりお金かけて3クールくらいの長編を作ってほしい。そのくらい力のある作品、だと思う。

何歳になっても面白いのは、平易でありながら感性に響く日本語の美しさと、誰でも知ってる「アマテラスオオミカミ」ら日本の神様をモチーフにしたキャラクターの魅力、「憎むのではなく愛そう」といういつの世にも共通するメッセージ性、そして重要人物が油断してるとあっさり死ぬ重々しいストーリーが全て揃っているところだと思う…。
こうして改めて魅力を書き起こしてみて、いやもう、ほんとすごいな!?としみじみ思うのでした。もう老若男女全員読んだらいいよ争いが減るよ。

十分多くを語りましたが、一応このサイトでは「空色勾玉」と、実は三部作の中で一番好きな作品である「白鳥異伝」の特集ページを作っています。よければご覧くださいませませ。

空色勾玉:https://sunset-rise.com/sorairo
白鳥異伝:https://sunset-rise.com/hakutyo

デルフィニア戦記/茅田砂胡

今も続くライト文芸における俺TSUEEEEEという流れの、源流に近いところにある作品だと思う(あっ異世界に飛ばされてきてるし、いわゆる異世界転生チートモノだねこれって)。

突如異世界に飛ばされ、しかも性転換までしてしまった絶世の美少女(元は絶世の美少年)が、内乱によって追われていた王様と出会い、これを助け、乱世を切り開いていく物語です。ンンッ、ここまで書いて思ったけど、漫画キングダムと同じ流れだね。
大きく異なるのは、この主人公である絶世の美少女が、走れば馬より早いし戦場では敵なしの、まさに無双のチートキャラで、なんかもうすごく強い。とにかく痛快で愉快。

この、俺TSUEEEEEが、今も昔もニーズとして底堅い理由って、アベンジャーズとかスパイダーマンを楽しむ感覚に近いんじゃないかと、わたしは思う。もし自分が強大な力を持っていたら、スーパーヒーローがいたら…映像なり小説なりでそれに触れ、仮想体験することで高揚感が味わえるという。ハリウッド映画のドンパチを見た後は、気持ちが明るくなって、自分が強くなったような気がするものね。

そんなチート小説は、ヒーローへの憧れと同時に、心の奥底で「チートが敗れるところも見たい」という野次馬根性をも喚起させる。ヒーローやヒロインが膝に土を付けたとき、読み手はどんな気持ちがするのか。そしてチートはどのように逆転していくのか、それが見たいという。強ければ強いほど、どうやって負けるかが気になるという、逆説的な興味が湧いてくるように思う。

国と国が争う戦記モノとしても面白いので、挿絵のないバージョンが売り出されているのもよく分かります。でも、本作の魅力は主人公の圧倒的な美貌と強さにあると思っているので、もし読むなら挿絵有りの方を読んでいただけたらな、と思うのです。

本編は完結済みですが、実は著者ご自身の作品同士がクロスオーバーするファン大歓喜なシリーズが今も続いています。何作か読みましたが、ちょっともう…なんていうか内輪の盛り上がり感!って感じなので、そちらは追いかけてません。でもたまに、リィと一緒に冒険をしてみたくなるんだよね。本編買い集めなきゃ。(なんだかんだ言って、恰好つけて挿絵無し版を買おうとする自分がいる)

ぼくの・稲荷山戦記/たつみや章

ついったのプロフィールにも書いていますが、はつねという名前は本作から頂戴しています。ちなみにこの名前は中学生くらい(ヒィィ)から使っているので、初音ミクさんが登場したときは動揺したけどそのまま使い続けてます。

主人公まもるくんの家に、ある日謎めいた美青年が下宿しにやってくるのだけど、実はそれはお稲荷さんが化けたもので、まもるくんはおきつね青年と一緒に地元のお山を守るため奮闘するというストーリー。
わたしの信仰に対するスタンス「信じればそこに神はいる」は本作品によって形成されたようなもんだ。

実は本作、神と人三部作として後二作品があります。勾玉三部作といい、当時のわたしは“三部作”という言葉が気に入っていたのだな。勾玉と違って、こちらの三部作は作品間の関連はまったくありません。題材が一緒というか、環境問題と子供と神様を絡めた作品になっていて、今思うと…なんていうか…思想が強いというかね…。
今回取り上げた「ぼくの・稲荷山戦記」は自然破壊、二作目の「夜の神話」は原子力、三作目の「水の伝説」は水質汚染(と河童)だったかな。

環境問題自体が諸説あるというか、色んな意見があるテーマなので強く勧める作品ではありませんが、特に自分が今不動産に関する仕事をしていることもあり(本作で言う悪役の立場)、心にとめておきたい作品だと思っています。

月神の統べる森で/たつみや章

はいこれもたつみや章作品ですね。沼にハマった頃のわたしは、凡そ荻原規子さんとたつみや章さんで構成されていたのかもしれない…。

古代日本(縄文時代くらい)をモチーフにしたファンタジー。正直全くあらすじは覚えていないのだけど、アイヌ文化を取り入れた、作中の信仰スタイルに激しく共感した記憶がある。

すべてのものに神は宿る。狩猟で得た生き物は食べても良いと神がその身を捧げたものだから大切にいただく。自然を敬い、共存しようとする姿勢…。

一時期あまりに傾倒しすぎて、わたし図書館で古代の暮らしの本を借りてきて、自作の弓矢が作れないか検討したものね。本をコピーしてノートにスクラップして、こうやって作るんだなとイメトレして、近所の公園で素材になりそうな枝を探し回った記憶があります。厨二病というか、小五病というか…。笑
あとは、飾り花(作中で出てくる、木を彫ったお花で神様に捧げるもの)も自分で作ってみたいな‥どんな形なのかな…と想像をめぐらせたり。

縄文時代と聞くと胸が高まるのは今でもですが、やっぱり古代ってロマンあるよね。話はちょっと変わるけど、本作好きな人は漫画ゴールデンカムイもきっと好きだと思う。その意味で、19年の直木賞を獲った「熱源」もかなり気になってます。

ちょー美女と野獣/野梨原花南

確か姉がお友達から借りてきたものが家に置いてあって、それを読んだらすごくハマったのがきっかけだったように思う。姉は全然読まなかったけど、わたしは全巻きっちり買い集めた思い出の一作。(こういうパターンは結構あって、プレステの「マール王国の人形姫(うわ懐かし)」も同じく、姉経由で知ってわたしだけがハマったものです)

タイトルの”ちょー”は”美女”にかかっていて、忌み嫌われるほどの美しさを持つお姫様と、魔法によって野獣となってしまった王子様が恋に落ち、魔法が解け……たら、実はちょー美女がケモナーで、人間に戻った王子様(当然美男子)にNGをつきつけ、もう一度野獣に戻してもらうために王子の祖国に殴り込みに行く、というストーリーです。ほら荒唐無稽で面白そうでしょう。笑

文体に癖があるので読み手を選びますが、1巻は1話完結なので興味があったら楽してみるといいかも。わたしの長らく続いている価値観「色んなところに行ってきて、色んなものを見てくる」は、まさにこの作品から得たもの。読むたびにむずがゆい気持ちになる、これも大切な作品です。

麦の海に沈む果実/恩田陸

高校生くらいの時に読んだんじゃなかったかな。ミステリは元々読んでいたと思うけど、ノスタルジックというか、耽美で物憂げな作品群の沼に最初に落ちたのは本作だったかも。恩田陸を延々と読み漁っていた時期がわたしにもありました。(突然の告白)

記憶喪失の美少女理瀬が北の湿原の中にたたずむ全寮制の学園に編入するが、その学園は一流の教育を受けられる変わりに、決して学園の外に出ることのできない閉鎖された空間で。軒並み顔の良い美少年美少女(それもそのはずで、芸能人や政治家の私生児が送り込まれる場所でもある)が笑いさざめく裏で、次々と不穏な出来事が起こっていく…という物語。

なんだろうね、このロマンを掻き立てる”雰囲気”としか言えない、魔法のような面白さは。美しい少年少女たちの心の中は愛憎や思惑、策略がドロッドロに渦巻いていて、でもそれを互いにひた隠し、隠し切れずうっかり狂気が漏れ出る様は、人間の二面性や本質を描き出そうとしているかのようで。しかもそれが、閉鎖された全寮制の学園で、たっぷりとしたノスタルジックに包まれて展開されるという……ね!(同意の強要)エモさしかないね。

気になった方は、後はもう何も言わず、何も調べずに、「麦の海に沈む果実」⇒「三月は深き紅の淵を」⇒「黒と茶の幻想」⇒「黄昏の百合の骨」と読み進めましょう。幸せになれます。(怪しすぎる勧め文句)

ぼくとアナン/梓河人

ぎゃん泣きした思い出の本です。絶版なのね悲しい…。

ホームレスと猫が、ごみ山の中で赤ん坊を拾って育てる話。ストーリーテラーは猫です。猫の“ぼく”と拾われた少年“アナン”の物語。ホームレスとしてすさんだ日々を送っている人々に、アナンはその存在だけで輝くような光、温かさ、きらきらした愛おしいものを与えていく。今風に言うと、大変に尊い

どっぷり感情移入して、布団にくるまってわんわん泣きたい、わんわん泣くことで癒されたい、そんな時にぴったりな、処方箋みたいな物語だと思います。

同じ作家さんが(他の作家さんとの共著で)大人向けに描いた「アナン、」という上下巻もありますが、そちらはホームレスの厳しい現実もたっぷり書かれた社会派スピリチュアル小説に仕上がっていて面白いです。
でもやっぱり、本作のファンタジックでうきうきする感じがお気に入りなので、読み手の年齢問わず、本作の方をおすすめしたいな。
ハードカバー版は酒井駒子さんの表紙で、それがとても素敵なんだけど、文庫版は全然違う表紙でちょっと残念だった。少年の後頭部の丸みは宝物だと思うの。

バッテリー/あさのあつこ

思春期まっただなか、反抗期まっただなかの中学生の時に読んでハチャメチャに共感した作品。漫画家・アニメ化・映画化もされた大ヒット作なので知っている方も多いのではと思います。(主人公の巧を林遣都さんが演じていて、それがもう(見た目が)ハマり役でね…)

ピッチャーとして高い実力とプライドを持つ巧少年が、病弱な弟の療養のために引越した先の中学でキャッチャーの豪に出会い、性格の真逆な二人がバッテリーとして成長していくお話。

何に共感したって、12歳の巧くんの心情だよね。わたしは巧くん(元甲子園球児を打ち取れるほど実力のあるピッチャー)のような才能を持ってはいなかったけど、自分の中で行き場の無いエネルギーがぐるぐるするのをどう扱ったら良いか分からなかった一人の中学生として、巧くんとお母さんのやり取りに、泣きながら共感したのを思い出す。自分の母親もこの作品を読めば良いのにと、そうしたら今のわたしの気持ちを分かってもらえるのにと、噛みしめるように思ったことを思い出す。…そういう楽しみ方だったので、正直どういうストーリーだったのかは、ちょっとよく覚えてないです。笑

前述のちょー美女と野獣と並び、思い出すとモダモダする大切な作品。もし自分が母親になったら、絶対に読み直そうと思ってる。

開かせていただき光栄です/皆川博子

これは最近はまっている沼です。(英語を和訳したような文章)
一昨年、一度は挫折した本作ですが二度目のトライで無事どっぷりとハマりました皆川博子ワールドに。幻想文学って訳分からんイメージでちょっと距離を置いていたのですが、本作はロンドンを舞台にした愛すべき解剖医とその弟子たちの愉快なドタバタ劇〜暖炉から見知らぬ死体出てきちゃいました〜という風情で、エンタメ性も高く、皆川作品の入門編として大変に優れた一作だと思う。

そして、本作がもし刺さった人は、すかさず続編の「アルモニカ・ディアボリカ」を読んで、皆川ワールドにどっぷりハマりこもう。エモさが過ぎるぞ皆川博子90歳卒寿!(今も開かせて〜の続編を執筆中だとか。お待ち申し上げております!)

まるで酔っ払った時の世界みたいな、景色がぐにゃっと歪んで、足元がおぼつかなくなる感覚が、文字を読むだけで込み上げてくることを、わたしは皆川作品を読んで初めて知りました。

この方にしか描き出せない世界観が好きです。グロテスクで、人間らしくて、哀愁が漂い、痛ましく、愛おしい。まだまだ未読作品が多いので、引き続きたっぷり楽しませていただきますぜ!(ヘッ

ふう、ひとしきり思いの丈を書くことが出来て満足しました。随分読み返していない作品も多くて、読み返したくなったなぁ。
将来、本棚をしっかり作ることが夢なのですが、今回紹介した作品は絶対買い集めて並べたいです。

最後までお読みいただき、ありがとうございました!