“彩雲国物語”作者の新シリーズは重めな洋風ファンタジー「レアリア」

「”道化師”。六番目の席を埋める者。帝国のありとあらゆる罪なき者、また罪深き者を代表する者よ。声なき者の声を聞き、目となり耳となり、最後の一票を投じるお方。現帝国宰相セシル・ラ=ラ・ゼノン。皇帝になりかわってご挨拶申し上げる。古の法としきたりに従い、最上の礼をもって、ここにお出迎え申し上げる。ようこそ、厳正なる女神の天秤のみもと、帝国議会へ。あなたの席はいつでも、ここに」(P335)

 

中二心をくすぐられる…!

この、もってまわった文体が雪乃紗衣さんの特徴でもあります。(後述)
 

ざっくりあらすじと感想

さて、彩雲国物語で一躍有名になった作者の新シリーズ。
 
※彩雲国物語とは?
名門に生まれながら貧乏育ちのお嬢さんが官吏となり、金持ちひしめく宮廷で成り上がっていく!
という笑いあり涙あり恋あり政治あり…なエンタメ中華風歴史ファンタジー(要素多い)
本編18巻・外伝4巻・スピンオフ1巻と大長編ですが、夢を追いかけて命を燃やした少女の奮闘に、
(主に仕事方面で)自分も頑張らなきゃ!とモチベがあれよあれよと言う間に上がるのでおすすめです。
→ とりあえずポチッときます?
 

前作は中華風でしたが、今回は洋風のファンタジー。
二国間の争いに身を投じる魔女たちの、二代に渡る戦いを描くもの。
 

これもまた大長編になるのかもしれませんが、正直な話、まあ1巻はすっごい分かりにくい。
思わせぶりな文章が多く回りくどい上に、謎を匂わせるだけ匂わせながら話が前に進んでいかないので

「何がどういうことなんじゃ~い!謎か~い!」

とストレスを感じてしまった。笑
 

帝国の王様と王朝の王様、そして帝国を支える軍師である魔女。
この三人はかつて同じ時間を過ごした親友であり、どうやら互いを思いあっているのに、
何かがこんがらがって、分かり合えないまま戦いが始まろうとしている。
 
魔女に拾われた少女は、命の恩人の影を求めるが、その恩人が自分の大切な者を奪っていくことを知り、恩人を憎む。
少女の周りの人たちは、どうか彼女に幸あれと望みながら、戦いのない未来を与えてあげられない。
 

なんか暗ーい面白そうな話が始まる予感だけは伝わるんじゃないでしょうか。
でも何が起こってるのかは読み終わっても全然分からないのです。
思わせぶり感がすごい。
 
妄執や偏愛、互いを思い合うがゆえのすれ違い……
そんなキーワードが刺さるなら美味しく読めるはず。

分かりにくいけどね!

※ちなみに現在2巻まで読み進めていますが、少しずつ時系列や人間関係が整理できてきて、
ハマってきました(星4つ付けてもいいかも)。みんなとりあえず2巻までは読むんだ!
 
※(2018年8月追記)既刊全て読んだ結果、ちょっとよく分からないな?という状態に陥りました。笑
登場人物たちの謎が明かされていくんだけど、思わせぶりすぎて、謎が明らかになっても「…?」となってしまうんだよなあ。
 


アマゾンの評価も星が2.7で笑う

 
2巻以降の感想&ネタバレはこちらからどうぞ!
https://sunset-rise.com/star3/realia2
https://sunset-rise.com/star3/realia3-1
https://sunset-rise.com/star3/realia3-2
 
 

分からなさすぎたのでまとめた〜人物編〜

 
巻頭に人物紹介があり、物語の理解に役立ったので、
ただしチョイ役は載ってなかったりするので、
相関関係も整理したいと思ったので、作りました(直球)
ipadアプリ「Ideament」というアプリを使いました。サンキュー!
 

相関図
クリックすると大きくなります!
 

分からなすぎたのでまとめた〜用語編〜

  • グランゼリア城:王朝との争いにおける最前線の城。
  • ストラディカ:帝都。城や地下水路には隠し通路があり、全ての抜け道を知るのは道化師だけだと言われている。
  • 魔女の左足(ザーリアー):オレンディアが統治する領。
  • 山の長老:法皇家の暗殺教団
  • 笛吹き一座:暗殺集団。アリュージャ王朝からの刺客?

 
街の名前がなかなか頭に入ってこなくて、
「あれ、この人今どこにいるんだっけ」状態に何度も陥ったので、
よろしければご活用ください🙃
 
 

分からなすぎたのでまとめた〜過去編〜

 
【??年前】
オレンディアとユーディアス、アリュージャが恐怖帝ヴァルデミアスに囚われ、帝国で同じ時間を過ごす。その後、アリュージャだけは脱出する?
 
【13年前】
皇帝ユーディアスの後継を選出する次期皇帝選が決まってから皇族が怪死。ユーディアスの実子は第一皇子エリファズ以外全員殺害された。エリファズの捜索に出たミルゼリスは”魔王の森”でミレディアを見つけ、保護する。
 
【4年前】
ロジェとエセルバードが率いた戦で王朝軍に攻め込まれ、グランゼリア城が陥落寸前まで追い込まれた大戦があった。ミレディアはギィと共にグランゼリア城を脱出し、帝都で皇帝に直訴し、援軍を求めた。自ら出陣したユーディアスとオレンディアが連携を取り、何とか陥落は防いだ。
 
ちなみに2巻では時系列がまとめられてるので、
このモヤモヤはある程度解消されます。不評だったんだろうな笑
 
以下、ネタバレまくりの感想が続きます。
未読の方はご注意ください。
既読の方は、「あーーーそれなーーー!」と共感してくれたら嬉しいです。笑
 
 

ネタバレあり個人用メモ

 
もうプロローグの段階でオレンディアたち親世代三人組の
悲しい未来が出てきてしまってるんだよなあ。
鳥かごとの中でも互いを思い合う三人の様子が描かれた直後なので驚きもひとしお。
えっ早速死んじゃうの?という。

 魔女将軍オレンディアは、懐かしむように藤色の目を細めた。
 三つ葉のクローバーのように、また三人で寝っ転がって、青い空を見たかったわ。
 オレンディアは手の中の、アリュージャの老いた首をなでた。
 ……首だけなら、ここに三つそろってるんだけど。それでいいかしらね。
 いったい、どうしてこんなことになってしまったのだろう。
 大おば樣、という少女の声が聞こえた気がした。大おば様、逝かないで。
 泣きだしそうな声だった。昔の私とは全然違う、二人めの魔女。
 オレンディアはユーディアスの背にもたれ、アリュージャの首を抱いて、微笑んだ。
「行きなさい、ミレディア。もう一人の私。あなたは鳥かごの城から逃げるの。自由よ。
 ……でも、あなたも、私と同じ運命をたどるのかしら。それとも」

 それとも。(P25)

 
ラストシーンから遡っていく手法は、大長編だと肝心のラストが
どんなんだったか忘れてしまうからメモしておく。
三人の死という避けられない未来に、どう収斂していくのか。
ミレディアはどうなるのか。悲壮感漂いまくりですが、でも気になります。
 
あとやっぱり、独特のむずがゆい文体がちょっと苦手かも、
でもあっさりしてたらそれはそれで物足りないかも…
という不思議な感覚に陥った。
 
ギャグっぽい場面もこれ見よがしすぎてちっとも面白いと思わないし、
体言止めが続く感じもちょっと…(酷評)
でも慣れたらそれもアリな感じがするんだよな…不思議…
 

「……アキを愛してる?」
「ずっと」
この世界で私を見つけてくれた人。ボンヤリしていた私を目覚めさせ、名前と心をくれた。絶望と愛情。道を歩く力。カラッポの剣をもちつづける勇気。私の全部。
包みこむように、ロジェの胸の中に抱きしめられた。愛しげに撫でてくれる。神様からの宝物を撫でるみたいに神妙に。耳元で、絹のような声がした。
「君はこっち側に留まり、僕が打つ盤の向こう側に座るんだね、僕のお姫様(ミレディ)。僕でない大事なものの為に。僕はこの先を進むし、君が護らないように、僕も護らない。僕と君のルールは違う。君はいつまで愛してると言ってくれるだろう」
「え……?」
サーッと世界を遮っていた水のカーテンが、薄れ、途切れて、あがっていく。
「雨があがるよ、僕の小さなお姫様。僕は君の大事なものを残らず殺してでも先に進む。そう、僕はそれを何とも思わない」
爪先が宙に浮いて、腕に抱き上げられた。頤に指がかかり、すくうように仰向かされたと思うと、フードが近づいた。とろけるような金髪が見えた。
真っ青な、凍えた湖底のような瞳が、いたずらっぽく笑っていた。
「ーーこの世界のいちばん暗くて深い奈落の底で、君を待ってる」
そうして、唇に烙印のようなキスをした。(P252〜253)

ほらもう、むずがゆい!

ところで、ここってミレディアがアキに、抱き上げられながら片手で顎クイしてちゅーされる場面だけど、
腕一本で持ち上げられてるって苦しそう。
いや、というか無理あるでしょ!と思ってしまった。笑
こういうところも気になってしまう…
 

ただ、バッドエンドに向かって突き進んでいくように見える(でもきっとどこかに救いはある)コテコテのファンタジーって珍しいこと。
(そういえば彩雲国も途中からシリアス路線に切り替わったもんな、作者さんはこういうテイストが好きなのかな)
 
ミレディアがアキに、レナートがミレディアに、そして親世代の三人がお互いに、
抱く感情はどれも執念が含まれていて、
わたしはそんな”偏り”に人間らしさ、生々しさを感じてつい読みたくなってしまうこと。
分かりにくくても相関図までちまちま作ってしまうほど、気になる小説なのかも。面白いのかも?
 

とりあえず、既刊の3巻(前後篇なのであと2冊)を読んでみて、
もう一度、どう評価するか考えてみよう🤔