首を長くした「薔薇のなかの蛇」への思いの丈

17年ぶりのシリーズ新作!と界隈がざわついた「薔薇のなかの蛇」が、2021年5月26日に発売しました。

書店では24日頃から並び始めている、という情報をTwitterで発見し、慌てて買いに行ってきました!
(サイン本は入手できておらず…こちらは26日頃から書店に並び始めたようで、時差があるのだなと思いました)

なるべく予備知識を得ないように、帯も見ないよう薄目でレジに持っていきブックカバーをつけていただいたので、まだちゃんと表紙や裏表紙を見ていません。

この記事を書いてから、ああ写真を撮らなきゃということで初めてちゃんと眺めました。

初回はポストカードガチャ付き
裏表紙は花と魚のレリーフ
カバー下も裏表紙と同じです
伝わるかな!?見返しは模様が浮いた加工になってて素敵
一番好きな挿絵、美しい理瀬、やっぱり不穏
ポストカードガチャ(?)は「薔薇のなかの蛇」でした。麦海が欲しかった…

このブログにお越しの方は、シリーズ前作をお読みになっている前提だと思いますので、さっさとネタバレの方向で進行したいと思います🤗

いやいや知らんよ!という方は、何も言わずに傑作「麦の海に沈む果実」を読みましょう。話はそこからだ。

https://sunset-rise.com/star5/fruits-sinking-in-the-sea-of-wheat

それと、続編「黄昏の百合の骨」も忘れてはいけませんね。

https://sunset-rise.com/star4/twilight-lily-bone

やってみよう!リアルタイム感想

本作を心から楽しむためにどんなことをしたらいいかな?と考えた結果、リアルタイム感想を書いてみることにしました。

子どもだった頃、友だちや兄妹と、一つの漫画雑誌を一緒に読んだ記憶はありませんか?
一緒に同じ漫画を読みながらああだのこうだの喋るのが、わたし大好きだったのですよね。

大人になってからそんな機会は無くなりましたが、あの頃の感覚を思い出したい…読みながらああだのこうだの言いたい…という思いが募ったのでした。ので、本を読みながら思ったことを、一旦本を読む手を止めて、ここに書き記しながら読み進めることにしたのです。

数年前に一度、同じく大好きな作品でリアルタイム感想をやってみたらものすごい読むのに時間がかかった(当たり前)のでちょっと怯えながらなのですが、お楽しみいただけたら嬉しいです。

(ちなみにその記事はどっかにいってしまいました。今読んだら絶対恥ずかしいので探さないようにしています)

⚠もちろんネタバレがすごいので、未読の方は読んではいけませんよ⚠

  • 中表紙のイラストも素敵だな、魚?
  • 中表紙をめくったところのアラベスク模様というのかな、これもいい感じ。
  • 目次の各章題、カタカナのワンワード。これまでの理瀬シリーズとちょっと違うね。
  • 序章、挿絵は…お墓?杭?丘の上の…岩と木?
  • 霧の描写ひとつ取っても、恩田さんの文章が好きだなと思う。わたしの体は確かに家で本を読んでいるのに、体の一部が霧の中に滲んでいくようで。
  • 序章、余韻たっぷりだな。不穏な物語の幕開けって感じ。好き。
  • 第一章の挿絵、これまた特殊で、不穏な…虹も書かれているのに、夜の闇も感じる。
  • 革張りの壁ってどんなのかな。
  • ヨハーン!!!久々!!
  • あっアポ無しとは思ったけど男はヨハンをわざわざ探したのね。
  • バスケットに入った…ってロマンあるよね。赤ワインにチーズ、バケットにマフィン、コンビーフ…下げて持って来たい。(どこに?)ああ、お酒飲みながらこの本を読んだら楽しそうだなあ。
  • ブラック・ダリア事件って本当にあるのかな。…(調べる)… ありました。後で読もうっと。
  • あら、場面が転換。横文字の名前が次々と。理瀬シリーズって毎作登場人物が多くないけど、今回はそうでもないのかな。
  • 炭疽菌?細菌学上重要な細菌…ふむ。
  • 理瀬ッッッッ!禍々しい美しさッッッ!
  • 声低いんだね、理瀬。(落ち着きを取り戻す)
  • 第二章の挿絵、魚と花…中表紙のイラストと似てる?と思って見返すと、花の種類は違うけど配置は一緒だった。
  • 第一章の挿絵にも魚が居たね。魚と花と蛇、なんのモチーフなんだろう。
  • みんなお酒飲んでばっかりだな。ああ、キリッと冷えた白ワインが飲みたくなってきた。
  • アーサーがリセを形容する描写が粘っこくてワロタ。おっさんか。
  • クイーンズ・イングリッシュって憧れるよね。身につけたいと思った時期がわたしにもありました。(急な丁寧語)
  • アナベル・リー…?…(調べる)…エドガー・アラン・ポーの詩でした。
  • 図像学面白そう。でも、将来どんな仕事につながるんだろう…?なんて考えるわたしは会社員にしかなれない。(ネガティブなぺこぱみたいな言い回ししちゃった)。
  • 挿絵のリセ、美人〜〜!グレイのスーツが思ってたのと全然違った。(ジャケットにスカートの、薄めのグレーを想像してた。そんなフレッシャーズみたいな服着るのかなぁと思ってたから、違っててむしろ良かった)
  • 中国人がミニを売るってなんだろ?車のMINIはドイツだよね。
  • 家紋ってロマンあるよね。(わたしの感想・わたしの興味は大体”ロマン”に集約される)
  • 陰桔梗は明智光秀が使ったものだそうですよ。
  • キースの部屋、酒を酌み交わす三人、雨の匂い。きっと外には広い領地の緑が闇の中に広がっているんだろう。ゆったりしていていいなあ。ハイソというか。自分からは縁遠いけど、こうしてそういう空気を吸う(読む)のは気分転換になるな。
  • クレディ・スイスの支店長!?!?!?笑 流石に設定盛りすぎでは…?
  • 懐中電灯の動き、それを追いかける人々…なんかすっごいデジャヴを感じた。何か似たようなものを読んだかなぁ。
  • おお、殺人事件。いいね盛り上がって参りましたね。(エア揉み手)
  • 第三章、やっぱり魚と、宙を舞う手紙。放射状の光も前の章にあったね。
  • あっヨハンおかえり。さっきはもっとヨハンの続きを!と思ったし、今度はもっとリセの続きを!と思ってる。すぐにそっちのパートに夢中にさせる筆力、ここでパート変わっちゃうの!?と思わせる引きの強さ、さすがです。
  • ヨハンと話してる男性って誰なんだろう。久しぶりの再会っぽいけどスルリと会話に興じる感じは、旧友っぽいんだよね。…寛…?いや…聖…?!
  • ん、デイヴも見てるの?事情聴取は一人ずつではないのかしら。
  • なるほど、聖なる魚。これが挿絵に度々出てくる魚を意味しているのかな。
  • 「あたしだったらそうするわ」……いい!!!!!
  • しかし、麦海の中での理瀬はペーパーバックが読めるようにと英語を勉強していたようだけど、そこからイギリスに留学・進学したとして、”完璧なクイーンズ・イングリッシュ”って身につくものなのかな。
  • あさはかで気まぐれに毒を使おうとして自滅した人……もしかして、梨南子さんのことを言ってる?
  • ヨハンと男性の会話は、映画とかでもちょくちょく使われるような、シーンとシーンを繋げる語りの役割なのかな。
  • わぁ〜不穏な家族の肖像の挿絵!ホーンテッドマンションみたい(貧困な感想)
  • ミステリでは使用人が犯人であることは許されない、という表現に少し笑った。様式美、いいね。
  • 薄暗い廊下にリセが座ってたらめちゃくちゃびっくりするだろうな笑 絵になるなあ。
  • アーサーウキウキでワロタ。かわいい。
  • リセの口から、リセのバックグラウンドについて語られるの、わくわくする〜!
  • 水野家とレミントン家のつながり、なんか微妙な…中途半端な話だな。きっとリセは全部を語っていない気がする。ヨハンがレミントン家に反応したような書き振りがあったと思ったけど、彼はこのつながりを知っていたのかな。
  • 似てるって、誰に〜?!?!?!?雅雪??(テンション爆上がり)
  • あっ、リセとアーサーかぁ(スンッ)(テンション元どおり)
  • 第五章の挿絵、リセかな?奥の方にある館がタワーオブテラーみたいだね。ディズニー行きたい。
  • 親父への信頼感が全くなくて笑う。リセが入れ知恵してるの?
  • これはディナーの間に聖杯盗まれるな(名推理)
  • リセって自分ではすごく抑制しているつもりなのかもしれないけど、結構表情に出ているよね。そんなところも人間らしくて素敵だね。
  • 鉄アレイのような鼓のようなもの…って想像していたら、挿絵が思ったより鉄アレイでワロタ。
  • でも、全員が全員、とても価値があるものと確信するような工芸品ってどんなものなんだろうな。
  • あ、聖杯盗まれなかった。
  • 怯懦、って英語でなんていうんだろう。…(調べる)…うん、google翻訳だと普通にfearだった。cowardiceともいうのかな。もうちょっと堅苦しい単語があるのかも。
  • カメラマンの下りで気づいたけど、恩田さんって”難しい”ではなくて”むつかしい”って書くのね。だから何ってこともないけど。
  • カメラマン、絶対死体見つける〜!!
  • え、肉片浴びた…?こわすぎるだろ。
  • 第六章の挿絵、向かい合う女性二人…リセと…?
  • 電話線が切られている…!?そんなの、もっと人が死ぬじゃん!(どきどき)
  • 獣でした。そんな、爆発してちょうどよくキースの部屋に投げ込まれるもの?
  • リセの推理すごくない?思いつかないよそんなの(脱帽)
  • うう、こわい…ミステリというかホラーじゃない?本作。
  • しかし、犬を巻き込むのは良くない。
  • 第七章の挿絵、体を曲げてノート?を広げるリセ。体の角度こわい…
  • 館の半分の窓ガラスが割れるってどんな爆発!?獣と人間が爆発して、館と、ちょっと離れていたカメラマンに降り注ぐって、どんな勢い?!
  • 天を指差すリセの挿絵。空に描かれているのは馬…じゃなくて犬かな。あっ、放射線状に広がる光は爆発だったのね!(鱗ポローーッ)
  • 聖杯盗まれた!やったー!(さっき書いてたので喜ぶ。タイミング全然違うけど)
  • 第七章の挿絵………ヒッッッ!鳥肌たった。
  • ところで「聖なる魚」って、英語だともしかしてHoly Fishだったりする?ダサくない?
  • リセの言う昔の刑事ドラマってなんのことだろう?元ネタあるのかな。
  • 急に自慢が始まってワロタ。
  • ま、万引き…?
  • 情緒が安定してるって、いい夫の条件としてすごく大事な気がするなあ。
  • 命狙われたことがあるって言われたら、普通は「こいつやベーやつだな」と思われる気がするけど、リセが言うと本当にそうだったのかもと思えるものなのかな。梨南子さんに殺されかけたし、というかほぼ殺されてたし、本当のことなんだけど、ちょっと現実味がね。
  • ああ、もう少しで終わってしまいそう。この事件は解決するかもしれないけど、理瀬を取り巻く物語が一向に収束しそうにないんですけど…?恩田さんお得意の風呂敷畳まないパターンだったりする…?
  • 照明の間隔が空いているだけで扉があるって思うかな?照明が扉に当たるような位置にあるとか?いくらでもズラせそうな気がするけど。
  • ”そう弟が目で語りかけてくるのへ”……くるのへって、なんか変に感じちゃう。不思議。
  • 古い知り合いに花火職人????笑 古い知り合いっていう言葉、二十歳そこそこの女の子が使うかなあ。
  • 第九章の挿絵、急にハイカラなお姉さん。まさか……エミリア…?(まさかすぎる)
  • えっ、まさかのエミリア…?!じゃなくてアマンダ…?!
  • ふぁ〜〜〜〜〜盛り上がって参りました〜!
  • ローレンス・オリヴィエ賞ってなんぞ?…(調べる)…イギリス版トニー賞、なるほど。
  • 妹のお友だちの父親の職業知ってるって、貴族だと普通のことなのかな。
  • 廊下の先にアマンダがいるってところで鳥肌たった。
  • ギャーって言うキースおじさんかわいいな。ギャーって、恩田作品だとあまり見ない表現のような気がする。
  • 第十章の挿絵、がっしりお魚抱えててちょっとワロタ。
  • ヨハンパート、随分久しぶりだな。こっちの謎(男性はだれか、ヨハンはなぜここにいるのか)もそろそろ明かしてほしい。
  • 黄昏の百合の骨も、最後畳み掛けるような展開だったからなあ、今回もそういう感じなのかな。
  • この肖像画、お父さんなのかな。あんまり猫っぽくはないね。
  • 解決編来るかな…?ヨハンが安楽椅子探偵役ってこと?わくわく。
  • キース…?えっ!?キース!?!?(二人は知り合いだったの!?)
  • あ、犬はそういうことだったのね、少し気が晴れた。
  • 理瀬の神秘的な美しさ、実写化するとしたら女優さんは誰になるかなあ。
  • 敵としてアーサーと再会するの?っていうか敵ってなに?理瀬は何になるの〜?!(虚空に消える叫び声)
  • 終章の挿絵、ストーンヘンジに佇む理瀬。いよいよ終わりかぁ。
  • アーサー…?やっぱりMI6みたいなところってこと?デイヴの質問は当たってた?でも理瀬は情報部員ではないと思うって言ってた…?んん…?
  • 雅雪も慎二も、前作までの登場人物はヨハン以外出てこなかったですね。理瀬シリーズ、全く完結する気がしないんですけど…?

はい、お疲れさまでした。読むのに大体2日かかりました。五時間くらいかかったかな…。思ったよりも時間かからなくて良かったです。(謎感想)

あれぇ…わたし「薔薇のなかの蛇」が理瀬シリーズの完結作だと思い込んでいたのだけど、全然違いましたね。わたしの思い違いだったのかな?と思ったのですが、アマゾンレビューの中で同じことを言っている方がいらっしゃったので、きっと当時はどこかにソレが載っていたのでしょうね。メフィスト連載中は完結させるつもりだったのかな。

ところでアマゾンレビュー、どれもこれも理瀬シリーズへの深い愛情が滲み出てて読み応えがありますね。批判的なコメントも納得できるものばかりだし。特に「理瀬の物語としてはいささか期待外れ」というコメントには大きく頷きました。(後ほど詳しく書こうと思います)

結局どういうことだってばよ

⚠作品の重大なネタバレが含まれますのでご注意ください⚠

読み終わって、「あ〜シリーズは全然終わりそうにないけど、話は綺麗にまとまってるし、雰囲気最高だし、やっぱ理瀬シリーズ大好きだな〜!」と大満足で就寝しました。

しかし次の日、仕事をしながらふと気づいたのです…(仕事しろ)

あれ?結局何がどうだったのか、よく分かってないな?

ということに。

聖なる魚は?祭壇殺人事件は?それぞれの犯人の目的は?

結局、どういうことだってばよ!
心の中のうずまきナルト
が叫びをあげていました。お前、雰囲気楽しんだだけで全然内容理解できていないじゃん、と。

※NARUTO途中で脱落した勢なので、普段心の中にナルト君はいません。急に出てきた。

ということで、改めて作中の事件の中身と数々の仕掛けを紐解いてみたいと思います。大丈夫かな、ちゃんと理解できてるかな。

◼️祭壇殺人事件
全てヨハンの推測の域を出ないが、祭壇殺人事件の犯人はキース。キースはMI6の情報部員で、被害者は”バルカン半島の根っこのところにある国の人”。セルビアとかその辺かな?
事故か故意かは不明だが、キースはイギリス陸軍基地内のヘリコプター付近で被害者と何らかのトラブルに陥り、被害者はヘリコプターのローラーに巻き込まれ頭と手を吹き飛ばされて即死した。キースはコントラバス・ケースの中に遺体を隠すために胴体を切断、遺体を運ぶ途中でオートバイが使えなくなり運搬が困難になったため、途中の村に胴体を残す。残りの頭部と両手をブラックローズハウスの敷地内に埋めた。

◼️ヨハンのしたこと
聖なる魚を名乗りレミントンお父さんを脅迫することで、キース(とその他大勢の親戚たち)をブラックローズハウスに呼び集める。そこで祭壇殺人事件の模倣犯と、犬と人間の爆破事件を引き起こす。祭壇殺人事件の遺体はオーバードーズで死亡した遺体と、病気がひどく安楽死させる予定だった犬を用いた。爆破事件で使われた人間の体は、祭壇殺人事件(の模倣)に使用した頭部と手だった。
一連の事件によって、キースが埋めた遺体を発見すること(キースが自分で遺体を掘り返すか、大量の警察犬を投入させ発見させるか)が目的で、動機はキースが殺した被害者の生死を確定させ情報を流すことで母体に貸しを作るため。
ロバート叔父に毒を盛ったのもヨハンの仕業のようだけど(理瀬にデキャンタに入れたワインを飲まないよう指示していた)、そこまでやる必要あったかな?ロバート叔父がアマンダの存在を知っているから、目的の妨げになると思って一旦退場いただいたのかな。ロバート叔父が生き延びることも織り込み済みだったような気はする。

◼️理瀬の狙い
水野家の記録に残っていた、聖杯の入れ物となっている箱(=貴重な香木)を頂戴すること。レミントン家を訪問すること自体、また時期がヨハンの仕事(?)と重なることも、偶然だった。

◼️細かい謎
最初にキースとデイヴが見かけた怪しい人影はやはり理瀬で、ヨハンから指示を受けて林に隠してあったドローンを出すところだった。ただならぬ速さで林の中を動いている、というのは理瀬ではなくてドローンを見てそう思ったということなのかな。うーん…、そんなことある?ドローンと人影を見間違えるかな?

アマンダの目的は…よく分からない。どこかの国の外交官、書記官クラスの彼女がアーサーに近づいて盗聴器まで付けたのは何故?理瀬曰く、ヨハンの目的(キースが殺した被害者の遺体を見つけること)に関係があるだろうとのことだけど。聖杯が目的だったということかな。それはアマンダにとっての”副業”で、本来の目的は別にあるように思うのだけど。

キースがヨハンを訪ねた理由も…よく分からない。ヨハンが自分を疑っていると知って釘を刺しに来たのか、あるいは口封じのためか。口封じのためにヨハンを訪ねたものの、ヨハンに害意が無いと知り引き上げたとか?でもヨハン、間接的にはなると思うけど、キースを抹消しそうな気もする。自分に近づいたから今後何があるか分からないとかいう理由で、キースに殺された被害者の母国に告げ口したりとかして…。

レミントンお父さん(名前覚えられない)が晩餐で聖杯を披露したとき、あんなに堂々としていたのは何故?聖なる魚(=ヨハン)とその協力者(=アマンダ)との交渉によるものだという推測が当たっている気がするのだけど、ヨハン&アマンダがそのように仕向けた目的は?
爆破事件のあった同じ時間帯、自らマントルピースの中に入るよう脅されたレミントンお父さん。聖杯は箱だけ残し中身は消えていたけど、その箱も、理瀬によってどさくさにまぐれて盗み出されてしまう。哀れだなレミントンお父さん。

内容を理解した上で、全体の感想

うん、☝に書き出すことによって、頭の中がだいぶスッキリしてきました。

自分なりに丹念に読み込んで、改めて思うのは…

ゴシック・ミステリとしての雰囲気は抜群だし、舞台となったブラックローズハウスや、新登場のキャラクターもよかった。けど…けど…前二作(麦海+百合)が素晴らしかっただけに、少し物足りないと思ってしまいました。

細かい謎が理解しきれなくてモヤモヤするし、理瀬が火事場泥棒のように一千万円の香木を盗み出すというのもちょっとなぁ…。実は香木は水野家の財産だったもので、不当にレミントン家へ渡ってしまったから取り返したとか、一千万円じゃなくて一億とか、ダークヒロインなりの矜持や義賊的な部分が理瀬にはもっと必要だと思ってしまう。

理瀬がアーサーを重要視する理由も理解できなかったな。現時点のアーサーは、イギリスにおいて(表に出ない存在として)要職に就くかもしれない若者レベルであって、敵対する可能性があるから相手のことを知っておく、という目的自体に、重要性を感じませんでした。

理瀬やヨハンの真の目的・ゴールがそもそも分かっていないから、何とも言えないのだけど…

あとはすごく感情的な話ですが、正直、理瀬・ヨハン以外の前作までの登場人物が出てこなくて寂しかったです。笑

雅雪は!?お金貯めてイギリスに遊びに行くんじゃなかったの!?理瀬とテムズ川の辺りで自転車二人乗りしてるところを見せておくれよ……!

「百合」で語られた、いつか再び理瀬と交錯する二人の少年、は撒き餌だったの…!?(心の叫び)

ここまで書いて気づいたのですが、「麦海」と「百合」がこんなに面白いと思うのは、理瀬の中の”揺らぎ”を魅力に感じたからかもしれません。

「麦海」では、不思議の国(=三月の学園)に迷い込んだ彼女の戸惑いに。
「百合」では、悪の道に進み始めた彼女が、進むと決めてもなお、雅雪や亘との交流に微かに心が動く様子に。

それらの揺らぎに読み手の心も揺さぶられ、理瀬の歩いて行く道の先をもっと見続けたい、と願うこと、つまり新作への期待感に繋がったのだと思います。

その点本作は、他者の視点から理瀬が語られたこと、そして理瀬自身が成長・成熟したことによって、彼女の中の”揺らぎ”が読み手から見えなくなってしまった点が、物足りなさに繋がっているのだと思いました。

行く末を見たいと願いながら、成長したらしたで物足りないというなんて、なんて自分勝手なんでしょうね。笑
でも、そのように感じたのです。

読後、こちらのインタビューを読みました。

恩田陸が明かす、17年ぶり“理瀬シリーズ”の創作秘話 「どのようにオチをつけるかは最初に決めていません」
https://realsound.jp/book/2021/05/post-766063.html

読み応え抜群なので、読了後にお読みいただくことをオススメします。

気になる理瀬シリーズの続きについては、

――少し気が早いですが、今後の理瀬シリーズについてはいかがでしょうか。
恩田:現時点ではまだ何も決まっていません。今も連載を多数抱えているので、いつ執筆の順番がめぐってくるかという問題がありますが、『薔薇のなかの蛇』の最後を思わせぶりにしてしまったし、機会があればまた新作を書きたいとは思っています。

https://realsound.jp/book/2021/05/post-766063.html

とのこと。続きが読めるのはまた随分先になりそう…ということでめちゃくちゃしょんぼりしてしまいましたが、気長に待ちたいと思います。あれこれ書いてしまいましたが、最高なシリーズに変わりはないので!

講談社さん、頑張って恩田さんの中の執筆順位をあげてくださいお願いします!!!!!
読み手はそのためにも、なるべく新刊を買って売上に貢献したいと思います😇

余談:次はこれが読みたい

わたしのブログ、全部余談みたいなものなので何を今更…という感じですが、本作を読んで、以下の3冊を読みたくなったのでご紹介します。

『恐怖の報酬』日記/恩田陸

イギリス・アイルランドの旅行記。「薔薇のなかの蛇」を読みながら、あっこれきっと恐怖の報酬での取材?が活かされてるんだな!と思ったので、いま読んだらもっと面白いと思う。

(地球の歩き方風の、この表紙が好きだったのだけど…文庫本の表紙微妙だな…)

ずっとお城で暮らしてる/シャーリィ・ジャクスン

タイトルと表紙がもう強いはいもう不穏、といった感じ。以前から気になっていたのですが、こちらのブログでゴシック小説といえば!と名前が挙がっていたので、ますます気になりました。

(「薔薇のなかの蛇」がとってもゴシック・ミステリだなと感じたのですが、そもそもゴシック・ミステリの定義って?と疑問に思ったので、調べてました)

レベッカ/ダフネ・デュ・モーリア

先ほどのインタビューで恩田さんが名前を挙げていた作品。
ご存知!みたいな作品らしいので、押さえておかないとなと。上下巻のようなので、ちょっと読み通せるか不安ですが…。

以上、長々と書き連ねましたが、「薔薇のなかの蛇」の感想でした。次回作、気長に待っております…!

最後までお読みいただき、有難うございました!