夏はホラー!と「近畿地方のある場所について」に手を出した夜

「このホラーがすごい!2024年版」国内編1位とのこと、おめでとうございます!

「百年の孤独」が全然進まない(進めるつもりも余り無い)のであれこれ違う本に手を出している三連休初日に一気読みしました。

334ページ+袋とじと分厚い本。
読み終わった頃には夕飯時もとっくに過ぎていました。

寝食を忘れるというけれど、ひたすら一気に読むってなかなか出来ることじゃないので、これは作品の力かも。

内容に触れると面白く無くなるのでここでは伏せますが、なるほどという感じで、期待以上に怖くて、面白かったです。
(名作!傑作!ということほどではない)

作者(背筋さん)は”自分が踏んでしまいそう”な地雷をセットするのがお上手なのだな。
この本が怖いのは、作中で起こる事件や出来事がいずれも理不尽であることと、そのきっかけが自分の身にも起こり得るという身近さだと思ったのでした。

心霊スポットにわざわざ足を踏み入れたのだったら分かる。
オカルト誌の編集者なら分かる。
怪異を嘲笑ったのなら。

そんな自業自得ではない、ささやかな日常から起こる悲惨な出来事が、本書の中には沢山散りばめられています。

まるで、巧妙に隠された落とし穴がそこら中にあるような。
運ゲーじゃん!
と文句を言いたくなる理不尽さというか。それが怖い。そんなタイプの本でした。
(読んだことないけど「スマホを落としただけなのに」も同じ手法な気がする。理不尽さから言えばタイプは違うけど「残穢」も同じく)

映画化されたりシリーズ化されたり何かと話題の「変な家」とは違うアプローチでしたね。

それにしても……自ら足を踏み入れたが故に怪異に出くわすことが自業自得なら、好き好んでこの本を読んだわたしの身に、この本の中のような出来事は起こり得るかもしれないし、それは自業自得ってコト……?(嫌なハチワレ構文)

※☝︎の文を書いた瞬間に、膝に置いていたスマホ通知が来てドキッとしました笑

ということで、自己責任でお読みくださいませ。

ちなみに本書はカクヨム発ということで、今も全文読めるみたいです。
(カクヨム発って見ると急に安心感が漂う不思議笑)

https://kakuyomu.jp/works/16817330652495155185

以下、怪異に関するネタバレです。
読んでしまうとまっっっったく面白く無くなってしまうので、読み終わって頭の整理をしたい!と思うわたしのような方だけお読みくださいね。

超ネタバレ注意・ある地方で起こったことについて

※あくまでもわたしの読みなので、作者の意図と少しズレるかも

  • 明治時代に、”まさる”という男性が殺人の疑いで村民から暴行を受け、黒い大きな石に頭を打ちつけて自殺した。
  • ”まさる”は村の墓には入れず山の林に埋めて、黒い大きな石を墓標がわりにした。
  • その後、村では女が黒い大きな石に頭を打ち付けて自殺する出来事が繰り返し起こった。
  • 村人は山の上の神社に祠を作り、黒い大きな石を置き、”まさる”を祀ることにした。
  • (ただし、上記由来は老人の虚偽である可能性も示唆される)
  • 村ではその後、”まさる”を”ましろさん”と白くて大きな猿の神様だとして、柿や人形を備える風習が続いていたが、現在では祠には人形しかなく、神社も廃れている。
  • (黒い大きな石は、その後宗教施設⇨老人ホーム⇨展望台にあることが示唆される)
  • これが”山へ誘うモノ”であり、”まっしろさん”や”ましろさん”に繋がる。
  • 怪異の残りのパターンである”赤い女”と”鳥居のシール”について、”赤い女”は”ましろさん”(見たら死ぬ怪異)のせいで死んだ”あきら(了)くん”の遺体が発見された時、首を吊った我が子を下ろそうと両手をあげて何度もジャンプしていた母親がルーツになっている。
    ※この描写は痛ましいし、怖いし、悲惨だった……
  • ”赤い女”の題材になった母親は、子ども(”あきらくん”)の死後、宗教施設に入居する。そこでは”シール”の絵柄と同じ図象が描かれ、石を取り囲み女たちが飛び跳ね、宇宙と交信しようとしている。(=シールには女ではなく”了”と書かれたものもあるが、それは”あきらくん”を指している)
  • ”山に誘うモノ(=”まさる”)は女を求め、まだ出産していない女を対象として山に誘い殺す。
  • ”赤い女”は子ども(=”あきらくん”)を求めて、自分の味方になってくれそうな、同じ立場の女=母親を狙う。
  • (「読者からの手紙2」と「神社由緒看板」を見るに、おおもとに”鬼”がいて、”まさる”と”あきらくん”はその影響を受けている、あるいは生まれ持った力があり、そのせいで怪異になったとも読める)

結局、怪異の根本にあるのは人なんだよな〜。
綺麗に伏線回収しきらない不協和音も、意図的なのでしょうけれど少し気持ち悪かったですよね。

バラバラのピースが先に見せられて、それが完成しても綺麗な絵になりきらない違和感や不自然さも、本書の怖さを立たせているのかなとも思いました。

Xで検索すると秀逸な口コミがあったのでシェアさせていただきます。

確かにすぎる。おかげで怖くなくなりました有難うございました。
シールどうやって再現されたの!?すごい。
まとめ方が秀逸、素晴らしい

最後までお読みいただきありがとうございました!
普段はホラーをほぼ読まないので、新鮮で感想も一気に書けました。

いつもはファンタジーやミステリーを多く読んでいるので、もし良ければご参照ください!
以下の判断基準で五段階評価をつけて、カテゴリ分けするなどしています。
(本書は星3つでした。「残穢」の方が好み)

カテゴリ別に本を選ぶ
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アマゾンで見てみたら、背筋さん、9月に新刊が出るみたいですね。
著者自身が語り手として出演手法・かつ最後には怪異に侵される手法(同じテイストが好きなら「森が呼ぶ」もお好きかも?同作はわたしにはちょっと合わなかったですが)なので、”背筋”名ではもう作品出せないよなぁと思っていたらちょうど新刊が出るところで、すこーしだけ興醒めしました笑
(たぶん新刊は読まないな)