見抜けるはずもなかった「medium 霊媒探偵城塚翡翠」、霊媒美少女に踊らされ
霊媒美少女…?🤔
自分で書いておいてこんな言葉あるのかなと思ってしまいましたが、今日は「medium 霊媒探偵城塚翡翠」をご紹介させていただきます。
清原果耶さん主演でドラマ化しましたね、おめでとうございます〜!
「すべてが、伏線」という帯のキャッチーさと、表紙を飾る美少女のイラストが印象的で、本屋でよく見かけた方も多いかもしれませんね。
第20回本格ミステリ大賞受賞
このミステリーがすごい! 1位
本格ミステリ・ベスト10 1位
SRの会ミステリベスト10 1位
2019年ベストブック
の五冠達成!と概要ページに力強く書かれています。
※よく見たら下二つって聞いたことないな…?と思いませんか。SRの会は1952年に発足したミステリファン倶楽部によるファン投票、2019年ベストブックはApple Books Storeでその年に刊行された中から選ばれるモノだそうですよ。
21年7月には続編となる「invert 城塚翡翠倒叙集」が発売され、21年9月には文庫化!と、乗りに乗りまくっている本作ですが、Kindle Unlimited対象になっていたため読んでみました。
伏線たっぷりなのか…見破ってやるぜ…!とめちゃくちゃ斜に構えながら読みましたが、結果、表紙の美少女に踊らされて終わりました。気持ちよかったです(?)。
Contents
ざっくりあらすじ
推理小説家・香月史郎と、死者の声を聴き見えないものを霊視で見通す霊媒・城塚翡翠が難事件に挑む本格ミステリ。
都内の超高級タワマンに住む超お嬢様(らしい)霊媒・城塚翡翠は、自らの力を持つ意味を探るために無償で心霊に関する相談を受けており、本作の語り部となる香月史郎は知人の付き添いで彼女の元を訪れることに。
初めは翡翠の能力に懐疑的だった香月だったが、ある事件がきっかけで彼女の力を信じるようになり、二人はタッグを組むことになる。
特徴的なのは、翡翠ちゃんがその能力によって真相にたどり着いたとしても、彼女の発言だけでは証拠能力がないため犯人逮捕に直接は結びつかないというところ。その”真実”に向かって、香月センセイが必死に知恵を振り絞り、論理を積み重ね、”真実”をみんなのものにしていく過程が新鮮で面白かったです。
翡翠ちゃんのキャラクターもかなり特徴的で、彼女のギャップを魅力的に思う読者も多いはずです。
……と、なんとかネタバレにならないように本作のあらすじと特徴をご紹介してみましたが、これ以上はもう言えない!詳しく、言えない!
陳腐ですが、読み終えると「すべてが、伏線」という帯のアオリに納得すると思います。そして、他の人が読んでどう思ったか、感想が知りたくなるはずです🤗
ということで、以降はわたしの読んだ感想をば。重大なネタバレが含まれますので、読み終わった方は一緒にきゃっきゃしましょう。未読の人は絶対読んでは駄目ですよ!注意したからね!
読み終わった人だけが覗けるネタバレ感想
香月センセイが真犯人なんじゃ…?とは、翡翠ちゃんを別荘に連れ込もうとした時点で気づきました(遅)。
絶体絶命の翡翠ちゃん、どんな方法でこの難局をひっくり返すんだろう?と思いながら読んでいましたが、まさか霊媒設定がブラフで、実際はコナン君も裸足で逃げ出す超絶洞察力がウリの探偵だったなんて!
これにはやられました。いや、むしろ気づかないって誰も。
こういうどんでん返しって凄ければ凄いほどスンッ……となるリスクもあると思うのですが、本作のすごいところは、そのどんでん返しが一切破綻していない(ように見える)ところだと感じました。
気づく術も無いような単なる力技だったら、読者はスッと冷めてしまう。
けれど本作は、鋭すぎる推理を綺麗に霊媒で覆い隠し、香月センセイと読者をねじ伏せてみせた。
翡翠ちゃんによる怒涛の秒速解決編は読んでて痛快だったし、この話を練りに練った著者の構成力・トリックの書き方はお見事ですね。
「すべてが、伏線」というアオリはこれ(翡翠ちゃんの秒速解決編)だったのか〜という納得感がすごかった。著者と担当編集さん、こんなにみんながわーきゃー言って楽しいだろうなあ。
担当編集者 「本当にすごいから何も聞かずに読んで」と言いたいけれど、「本当にすごい」とすら言いたくない。最終的にたくさんの候補から「すべてが、伏線。」という帯コピーを選びました。「この本が評価されなかったら担当編集者をクビになってもいい!」とまで言ったんですよね。そしたら沙呼さんが、「別にお前のクビなんかいらないんだよ!」って(笑)。
『medium 霊媒探偵 城塚翡翠』相沢沙呼×担当編集者対談【前編】
大変だったみたいだけど、報われて良かったですね。(謎の親戚目線)
表紙のイラストは好みが分かれるところかもしれませんが、翡翠ちゃんの美少女っぷりが本書の重大要素でもあるし、個人的には良かったのかなと思います。
※最近こういうイラストよく見るなァと思ったら、同じイラストレータさんなのですね。
綾辻行人さんの「Another」、今村昌弘さんの「屍人荘の殺人」、須賀しのぶさんの「荒城に白百合ありて」…他にも印象的な装画を多数手がけていらっしゃいます。(from遠田志帆さん公式サイト)
いずれ実写化もされそうな雰囲気も感じました。
うーん、でも前半のあざといパートは、個人的にはそんなに気にならなかったのだけど、ツイッターの感想を見ているとぶりっ子しんどい、みたいなものも見られたので、映像化されると結構きついかもな……と思ったり。
medium読了。
— ペンギン (@penguin_117) August 10, 2021
しっかり翡翠に騙されていました。ドジっ子の描写に若干イラついた私を許して。段階を踏んで推理が楽しめるところが面白かったです。構造が面白いというべきか。
推理と結末どちらが先でも面白いことにかわりなし!#読了 #medium #相沢沙呼
それにしても、香月センセイが翡翠ちゃんを見る目というか、湿度というかが絶妙に気持ち悪くて苦手だったので、犯人だと分かって逆に安堵した自分が居ました🤪笑
「ぎゅって、してあげます……」
最終話より
その華奢な腕に、ほんの少し力が加わる。
香月は、しばらく腕の中のぬくもりを感じ取っていた。
それから、彼女の肩を掴んで、ほんの少し、身体を離す。
翡翠が顎を上げて、こちらを見ている。
揺らいだ眼差し。
その翠の双眸を覆う瞼。
潤う唇。
それが美しく、たまらなく……。
キスをした。
勘弁してくれーーー😭😭
今読むと「ぎゅってしてあげます」も大概だなと思いますが笑
何でしょうね、この香月センセイの湿度。句点の多さかなぁ。率直にちょっと気持ち悪いなと思いました。
相沢さんは初めての作家さんだったので、いつもこんな感じの文章なのか判断つかなかったのですが、もしこれも伏線なのだとしたら相当な辣腕だな…?
そのくらいジメッてましたよ香月センセイ。
あと、ちょいちょい過剰なサービスというか…美少女に「普通ではおっ勃たない」なんて言わせる必要あるの…?など、ちょっとどうかなと思うところもありましたが。
全体的には大変素晴らしく、五冠も納得です。
ほぼ一気読みしたのだけど、最高!みんな絶対読んで!と広めたくはならない……のは、わたしの好みによるところかも。
読んだら面白かった、仕掛けに驚いた、いや〜良かった良かった、と流れ過ぎていってしまうような。
勿論、ぶりっ子パートもガンギマリ推理パート(ガンギマリ推理パート…?)も、どの翡翠ちゃんも魅力的ではありましたが、ちょっと設定欲張りすぎとも思うし、わたしにはハイカロリーだったのかもしれません。
香月センセイの前では終始強気かつ嘲笑の姿勢を崩さなかった翡翠ちゃんが、実は心的ダメージを負っていたことがエピローグで明らかになりますが、それもなぁ…。
超人的な推理力とドジっ子演技、色仕掛けもお手のもの。けれど心根は純粋で繊細……なんて、翡翠ちゃんに「こうだったら面白いヒロイン像」を背負わせすぎに思えて、わたしは逆にやや興ざめでした。
翡翠ちゃんの豹変が最大のどんでん返しだった分、続編を描くのは難しそうだな〜と思ったので、読み終わったら次作「invert」はどんな話なののな?と少し興味を持ったのですが、どうやら犯人側の視点での叙述モノなのですね、なるほど。
なるほどと思いつつ、でもそれを知った時点でもう別に読まなくてもいいかなと思っちゃう。まだまだ謎めいている翡翠ちゃんの深掘りや、練られたトリックはきっと面白いだろうけど、別にいいかなという感じ。
うまく言えないけど、こういうところが、わたしにとっての”すごく好き”と”普通に面白い”の境目なのです。
すごく偏見なので違ったら申し訳ないのだけど、↑にも挙げた「屍人荘の殺人」も、多分同じ感じなんだろうな。すこーし文章がライトで、驚くような(見抜く術も無いような)仕掛けがあって、映像映えしそうな。
「屍人荘の殺人」は発売して間もない頃にKindle版を購入済みなのですが、何となく食指が動かず、ずっと読んでいません。今度読んだら、本作「medium」と比較してみようかな。
最後までお読みいただき、ありがとうございました〜!
なお、当ブログでは個人的評価別にカテゴリ分けをしています。本作は★2つでしたが、もし「自分も五段階評価で2だったわ…」という方がいらっしゃいましたら、ぜひ★4つ以上の作品をチェックしてみていただきたいです笑
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